紺碧のひと
安良巻祐介
頭から足まで綺麗な藍色をした警備員が、我が家の周りをずっと巡回していて、心強いと共に少し恐ろしい。
こちらを害するつもりがないのはよくわかるが、何しろこちらと言葉で会話できないものだから、何を考えているのかはわからない。
どういうつもりで警備を買って出てくれているのか、どこかから派遣されてきたのか。
何より、仕事だとすれば、何か代償を求められるのだろうか? そうだとしても、今の私に払えるものなど何もない。強いて言えば生来持っている精神的通貨、古式ゆかしい言い方をすれば魂くらいのものだ。
その考えに至ったとき、心なしか外を歩いている警備員の歩調が変わったように感じられた。
もしや、ともすると。ひょっとして。
しかし、今どき人の魂などを取りたがるものだろうか?
昔に比べれば随分と価値のないものになっている気がするのだ、魂というやつは。
とは言え、ああいうものがその手の価値変動を気にするのか、彼らの近況というものをまるで知らないから、どこまでいってもただの憶測にしかならないわけではあるが。
私はただ、ここでただ浪費していても空しいと思って、彼らのような存在の、予測できない好意にすがって、日々をなんとか生き暮らしているばかりだ。
家のどこかで、りぃん、と鈴が鳴った。
がさ、がさ、がさ、と、いつもより少し性急な足音が、少しずつ大きくなってきた。
今、庭を抜けて、軒下をゆっくりと曲がって、真っ青な者が、帰ってくる。
紺碧のひと 安良巻祐介 @aramaki88
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます