サラダ
葵 一
彼はいつも何もかけずにサラダを食べる。
レストランなどでドレッシングがかかっているものは黙って食べるが、選択できるなら絶対にかけない。
最初に不思議がって「何もつけないの?」と聞くと、彼は短く「うん」とだけ答えた。
それでも何故かけたりしないのか問いただすと、ただ笑って誤魔化した。
彼と一緒になって数年が経った今日、いつものように朝食にサラダを用意し、いつものようにそのまま食べる彼。私は自分で作ったドレッシングをかけて口に運ぶ。
満足そうに食事する彼。見慣れた光景だけど、不思議と私もそれに満足している。
「何もつけなくておいしい?」
でも、不意にそう聞いてしまった。すると、
「うん。飾らないキミと同じで、辛さや苦さや青臭さも感じるけど、噛み締めるととても甘さが口の中に広がるから」
笑顔で答えた彼に私は照れを禁じ得ない。聞いたこっちが恥ずかしさで殺されるとか思った。
「コロッケと一緒」
残念ながらコロッケは調理されてるし下味もある。素材そのままではない。
いつも彼は素敵な言葉を余計な一言で台無しにする。
だから私は彼が愛おしくなる。
サラダ 葵 一 @aoihajime
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