第2話 上亙神社の言い伝え

 ボクが小学生の頃、集落はもっと活気があったような気がする。爺さんに聞いた話だと、昔は凄かったんだぞ、と言ってよく自慢していていたのを思い出す。今では一日一本しか来ない列車の駅とか、二十四時間やってない全くコンビニエンスじゃないストアとかしか目立ったものはない。たまたまこの集落が海沿いにあり、明治期に国道が通っていたことが幸いで、ガソリンスタンドだけは常に光り輝いている。

 小さな集落とはいえ広大な北の大地、集落の端から端まで歩けば二時間くらいはかかるのではなかろうか。隣町とは山で仕切られていて、鉄道なぞ使う人はおらず、唯一国道のトンネルがこの集落の出入り口となっている。外界から物理的に隔絶された集落の西側の山には、古い神社がある。皆からお上様と呼ばれ、敬われていた。

 とある言い伝えとともに。


 その言い伝えはボクの住む北国地方ではよくあるものだったが、その信仰方法が一線を画していた。百年に一度の大祭で人身御供として若い佳人を供えなければならない。今では非人道的だの人権どうこうだの言われてワイドショーなんかで大して詳しくもない奴がしゃしゃり出て非難するだろう。

 前回の大祭はボクが一歳の時だった。母が出て行った後だったのを薄らと覚えている。その時誰が供えられたのかは知らないが、大人達が揉めていた事は確実に覚えている。


 何故だか母の声が聞こえた気がした。ぼーっとしてたからか。授業中にもかかわらず。先生に怒られた。




<また伸びるかも>

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北の大地に春が行く タツキ @nanakenhokuto1903

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