第1章 私がヒロイン?!

「次に、主人公のヒカル役やりたい人挙手して下さい。__誰もいませんか?」

「あっ、はい!俺やります!」

翔太ショウタくん、主人公役やるのかー。ヒロイン役誰がやるんだろう。文化祭の学年劇でキャストをやる人たちの名前が並ぶ黒板を見てふと、そんなことを考える。

「じゃあ、次に、ヒロインのスズカ役やりたい人挙手して下さい。」

教室を見渡すと何人かの女子が手を挙げているのが見えた。

愛結美アユミ、やりなよ。」

突然、隣の席に座る親友の美鈴ミスズにそう言われて一瞬、思考が停止する。

「だって、ヒロイン役って主人公に片思いしてる女子中学生って設定でしょ。愛結美にぴったりじゃん。」

そう、私は小学3年生の頃に同じクラスになった時からずっと翔太くんに片思いしている。でも、私は舞台に立つようなタイプではない。

「でも、ヒロイン役なんて無理だよ。私は小道具係とかで良いよ。」

私がそう言うと美鈴は

「中学校生活最後の文化祭なんだから楽しんだもん勝ちでしょ。ほら、募集締め切っちゃうよ!」

そう言って「愛結美もやりたいってー」と仕切っていた委員長に向かって叫んだ。

「み、美鈴……。」

私の気持ちなどつゆ知らず、委員長は話し合いを進行する。

「では、やりたい人が多いので多数決で決めます。全員、机に伏せてください。まず、莉奈さんが良いと思う人。次に…………最後に愛結美さんが良いと思う人。それでは顔を上げてください。」

私は多数決で、地味で影の薄い自分に多く票が入っているわけがないと思いながらも、ヒロイン役もいいかもしれないと心の隅で考えていた。

「では、結果を発表します。愛結美さんの投票数が1番多かったのでヒロイン役は愛結美さんにやってもらうことになりました。」

私は思わぬ結果に口をポカンと開ける。

「では、愛結美さん意気込みをどうぞ。」

「えっ、意気込み?!えっと、こんな大役はやったことがありませんが、精一杯頑張ります。」

突然のことにしどろもどろに意気込みを言うと自然と拍手が沸き起こる。

「すごいじゃん!愛結美、頑張ってね!」

「そ、そんな……無責任な……でも、やるからには頑張るよ。」

無責任な美鈴に応援され、私は中学校生活最後の文化祭でヒロイン役を演じることになった。

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幻の彼 栞菜六花 @Rikka_Kanna

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