第3話嫁

年甲斐もなく、変なファンタジーがかった同じ夢を何度も見る。


夢の中でやたら視点が低いと思ったら自分が白い蛇になっていて、泣きながら顔の歪んだ大きな男を咬み殺す夢だ。

不思議な事に噛んだ男はありがとうと微笑みながら死んでいくのだ。

私は悲しくて居たたまれない気持ちになる。

そして何故かその男から離れないという夢だ。

もちろんそのまま男と一緒に埋葬されてしまう。もっと違う形でこの人を救えなかったのだろうか?そんな気持ちで眼が覚めるのだ。

小さい頃から忘れた頃に見る夢だ。


今日久々にその夢を見た。

ここ最近全く見なかったから忘れていたが、正直目覚めは良くない。

思わず起き抜けに、ため息が出た。

時刻はまだ夜中の3時。この夢を見るとその後もやもやとし、また寝付くのに時間がかかる事も思い出した。

仕事があるからしっかり寝たいのに。。

ゆっくり隣で寝ている旦那の方へ寝返りを打って見た。

ぼやっとした旦那のマヌケな寝顔を見ると昔から落ち着いた。

結婚した理由も妙に落ち着くという理由で結婚した人だ。

こういう時こそ、その力を発揮してもらおうと思った。

ところが、旦那もこっちを見ていた。

薄暗い中で目が合った。

『え?起きてたの?』

旦那は小さくうなづいた。

『笑うなよ。ちょっと、変な夢見てな。目覚めちゃったんだよ。』

笑うなと言われたが、笑ってしまった。

自分も夢で目が覚めたのだから、何となく似た者夫婦なような気がして嬉しくなった。

旦那にどんな夢だと聞くとこう語り出した。


『昔からよく見る夢で、俺さ。何か罪人みたいなんだけど、何もしてないっぽいのね。何か牢屋みたいな所にぶち込まれてさ。明日にでも処刑されるって所で、しゃべる白い蛇が出てくるのよ。そいつがね。どうも昔に助けた蛇らしくて、牢にぶちこまれた俺の事を助けたいって言ってくれるんだけど、、、蛇に助けたいって言われてもねー。で、夢の中の俺がね。処刑されるくらいなら貴方に噛まれて死にたいって言うのよ。またさー。その蛇がさー。申し訳なさそうに噛むのよ。ごめんなさーいって。』

私はその話を聞いて鳥肌がたった。

『マジで?その後の続きは?』

『え?続きって…言われても。まぁ、噛まれた俺さ、死ぬんだけど、蛇が辛そうな顔をしてるからありがとうって言って目を閉じるんだけど、暗いなかで蛇がね。もっと違う形であなたを助けたかったっていつも言われんだよねー。そこでいつも眼が覚める。』

私は布団の中で旦那の手を握った。

急な事に旦那は眉間に皺を寄せている。

別に仲が悪い夫婦ではないが、手を繋いで寝る習慣はない。

初めは戸惑っていた旦那だが繋いだ手を握り返しているうちにまた眠くなり出したようだ。

目が微睡んで来た。

『ねぇ、運命って信じる?』

半目の旦那が、眠たそうに答えた。

『いやーー。そういうのは…俺の中ではUFOとかと同じ扱いだから。』

私は暗闇の中で、バレないように笑った。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

蛇の嫁 サーモン花子 @tm084

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ