第2話罪人

祖母から聞いた話に【蛇と男】の話がある。

昔、この街の外れに住んでいた大男の話だ。

この男は顔は醜く歪み、言葉も上手く話せないひどい暴れ者だったそうだ。

男は己の醜さを恨み、街に来ては暴れていた。

或る日男は、一匹の蛇を捕まえ家に持ち帰った。

男は考えた。

この蛇の毒を野菜に入れ街の人間に喰わせてやると、、、

男はその醜い顔を布で隠し、野菜売りの振りをして盗んだ野菜に毒を塗りつけ売って回った。

大男の毒が塗られた野菜と知らず、買っていく街の人達。

そこへ、オレガノ卿の息子が通りかかった。

オレガノ卿の息子は聡明で正義感が強く美しい人だそうだ。

大男の野菜を見て、声を掛けた。

『この野菜達には見たこともない小さな穴が空いているが、この穴は何だ?』

大男は布で顔を隠しながら答えた。

『美味しい野菜には小さい穴が空きます』

よく見ると、まるで蛇が噛み付いたように穴が2つどの野菜にもある事に気付いた。

『美味しい野菜であれば、その場で食べても美味しいであろうな。』

大男は大きくうなづきました。

『美味しい証明に、そなたがその場で食べてくれないか?』

大男は首を横にふりました。

『私は上手く口が開けれません。どうぞ、貴方様が味見ください。さぁ、美味しいですよ。』

大男は野菜を1つ勧めて来ました。

男の横に置かれている野菜籠がカサリと動きました。

『その籠には何が入っている?』

大男は大事そうに籠を抱えました。

『これには何も入ってございません。さぁ、野菜を一口どうぞ。』

オレガノ卿の息子は聖劔で大男の顔の布を剥ぎました。

顔を見た街の人は驚きました。

あの暴れ者の大男だと大騒ぎ、籠をひっくり返すと毒蛇が出てしました。

そこで、毒蛇の毒が入った野菜を売っていたのがバレたのです。

大男は籠を抱え街の人間を突き飛ばしながら逃げ回りました。

しかし、オレガノ卿の息子により捕らえられ、牢に入れられました。

何と罪深い男だ。

毒蛇を使って街の人間を殺そうなんて!

大男はその罪の深さから明朝に斬首刑に処す事が決まりました。

しかし、その日の夜に男は捕まえていた毒蛇に噛まれ苦しみながら一人死んでいきました。

毒蛇で人を殺そうとした男が、毒蛇で死ぬ。

何と愚かな事か。

男の亡骸は、愚かさの象徴として、蛇と共に荒地に葬られました。


男の葬られた場所にはその後綺麗な花が咲く様になりましたが、その土地の花は絶対摘んではならない。

罪人の上に咲く花など、穢れの極みだと祖母がいつも言っていた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る