ある転生者の末路②
俺が連れて来られたのは、さっきの家よりは立派な屋敷だった。そこそこの広間に大人達がみっしりと集まっていて何だか息苦しい。その上、そこにいるのは揃いも揃ってジジイとババアなわけだ。
えー、何だよ。何で若くて可愛い
こないだの世界は出会う娘出会う娘みぃーんな美人だったじゃん。何ていうのかな、元いた世界の『中の上』ってのが最低ラインって感じで、もう、中の上から特上の特上みたいな。そんな世界だったじゃん!
何でだよ。異世界ってのはどういうわけか老いも若きも女は皆美人なんじゃねぇの? 何だよココ、しなびたババアばっかじゃん! ま――……、おばさんもいるけどさぁ、俺、年上って基本興味ねぇんだよなぁ。
あーあーもうやってらんねぇ。
仮に
何だよ、ガキ。まぁったうにゃうにゃうにゃうにゃうるせぇな。
ジジイもババアも俺のこと品定めでもするかのように見つめやがって。
「何だよ、うるせぇ。見んな。見んなって」
ジジババ達はやはり目をまんまるにしている。そりゃあ蛙がしゃべったらそうなるだろう。大丈夫か? 入れ歯落っこちてねぇか、バアサン?
おい、ガキ。何だよ、あんまり顔近付けんなって。お前の顔全体的に
やはり――というのか、それから俺はマジで神様扱いよ。これが下にも置かないってやつなんだろう。
水は毎日取り換えられた。
それはたぶん村で一番のきれいどころらしい女の役目らしく、まぁ正直田舎くせぇ芋女だったが、もうちょいこぎれいな恰好して化粧でもすりゃ化けるだろうな、ありゃ。まぁ、どうしてもっていうんなら、相手してやっても良いかなってレベル。
俺が入っていた風呂も何かでっけぇ盃になった。ただ、それだけは元のやつが良かったなぁ。浅いんだよ、盃はさ。まぁ、あいつらにしてみれば精一杯のもてなしのつもりなんだろう。その気持ちだけは汲んでやるよ。何せ俺様は神様の使いだからな。いや、こいつらにしてみれば、もういっそのこと神様そのものかもしれねぇか。ははは。
――ん? 何? 酒? 悪いねぇ。いや、俺も結構飲める方っていうかさ。お、これ日本酒? やっぱココって日本なんだな。それにしては言葉がまったく通じねぇのが気になるところだが。うん、美味い美味い。この村のレベルにしちゃそこそこの味よ。悪くないねぇ。
それから何日経っただろう。
俺は日がな一日すいすいと泳ぎ、ちょろちょろと垂らされる酒をぐびぐびと飲んで過ごした。まぁそこそこ良い感じ。ただ、ひとつ気にかかることがあるとすれば、だ。
ちっとも物語が進まねぇってところか。
いや、何も皆が皆、人間の姿のまま(何ならイケメン&モデル体型)で異世界に転生出来るとは限らないってのは知ってる。
とりあえずは生き物ってだけでも御の字かもしれない。それもわかってる。
でもさ、もーちょい、何か始まっても良くねぇ? お? 酒が来た。まぁ良いや、とりあえず今日のところは飲むかな。あー、美味美味。
それからまた少し経った。
この姿だと時間の流れがいまいちつかめない。時計もないし、俺がいるのは屋敷の奥の奥らしく、窓もないのだ。
しかし最近ちょっと身体が重いっつーかさ、うぅん、ちぃとばかし飲みすぎたかな。泳ぎにキレがないんだよなぁ。
たまには休肝日ってのを設けた方が良いのかもしれねぇ。救世主様がアル中とか恰好悪いし。
「おい、そこの女。酒ならいらん」
もうそろそろ俺の言葉を理解するヤツが出て来ても良い頃だろう。そう思って、部屋の隅できっちりと正座をしている芋女に向かって声をかける。
恐らく巫女らしいポジションを与えられた芋女は、慌てた様子で偉そうなジジイを2人連れて来た。
えー、またこのジジイかよ。いっつも酒を勧めてくるヤツらじゃん。大丈夫かよ。
「おい。酒はいらんぞ。休肝日、休肝日」
だーめだ、やっぱ伝わってねぇじゃん。はて? みたいな顔して首傾げてんじゃねぇぞ、ジジイ。
あ、まーたバカの一つ覚えみてぇに酒瓶出しやがったな!
「良いから」
割りと頑張って演技してみたけど、やっぱりまったく伝わってねぇときたもんだ。どくどくと俺の盃に酒を注ぎやがる。飲むよ、飲むけどさ。ちょっとだぞ?
え? あ? いや、それはさすがに多くね? いくら俺が蛙だっていってもさ、酒の中では泳げねごぼごがぼぐぼぶぐぶぼごぼぐご…………
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