④ 本格ストロベリーシェイク
「お待たせしました。本格ストロベリーシェイクです。ごゆっくりどうぞ」
店員が会釈と同時に、シェイクをテーブルに置く。
(……!? 予想よりやたらとデカかった上に、ストローが太いタイプのシェイク!)
ファーストフード店ではなかなかお目にかかれない本格的なシェイクだ。
一口吸う。
(ぐッ……! 太いストローに慣れていないせいか、やたらと吸いにくい――!)
僕の知っているシェイクと比べて、やたらストロベリーの粒がデカい。
思わず、吸引力を増してしまう。
それが失敗だった。
「ズゾーッ!!!」
(!?)
予想外に大きな音が出てしまい――前方のマダムがこちらを振り返った。
(ぐっ……! なんたる失態……! 針のむしろ、万事休す、四面楚歌――背水の陣!)
いや――諦めるな。希望を捨てるな。
見るな。感じるな。察するな。鈍感になれ。
そう――俺はただの食いしん坊ボーイだ。食前シェイクにがっつく、無頓着な男。それを演じきれ。
思い出せ――紅と黄色の異形。奴が浮かべていたあの表情を。
「僕には関係ありません」という無責任な表情を。
(……ぐっ! 少し厳しいか、この作戦……!?)
しかし――舌打ちも、嘲笑も飛んでくることは無かった。
マダムは僕から視線を逸らした。そして何事もなかったかのように、パスタを食べ始めた。
(あ……あぶねぇー! 九死に一生、首の皮一枚、生々流転――神羅万象!)
アドレナリン――
様々な四字熟語が脳内で狂気乱舞しているが、ともかく凌いだ。
こんなところで精神にダメージを負おうものなら――もはや食事どころではない。
(……本格ストロベリーシェイク。恐ろしい食べ物だ)
まさか、こんなところで協調性を試されることになろうとは――
油断ならない。パスタ専門店――
「だから、誰もあなたのことなんて気にしてないわよ!!!」
くらやみももこが、若干キレた。
余談だが、シェイクは二口で飽きて残した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます