最終回 バールのような、女子力は工具級です

 ヨウナが店で働き始めてしばらくたち。ヨウナは驚くほど女性客と馴染んでいた


「これは意外だな・・・」


 このバールには、結構女性客が来るのだが、周りに男性が居ないとなるとけっこう赤裸々な話をする。その一部にヨウナは見事に適応している。例えば・・・


「ねえ、ネイルのケアどうしてる?」


釘抜きネイルですか、いつも鋭く保持ちつつ、余計な引っ掛かり無いよう、適度な丸みに仕上げピカピカです☆ 錆止めの油も欠かせません♪」


錆び対策アンチエイジングとかもしてるんだぁ。ヨウナちゃんしっかりしてるのね」


 とか、この間も・・・


「最近肌がガサガサで、困ってるの。ヨウナちゃんもそんな事ある?」


鉄肌はだがガサつくのは困りますね。そこから更に痛み出したら大変です。私なら直ぐに紙ヤスリで磨きます☆」


「紙ヤスリ? あ、この仕事立ちっぱなしだから踵が固くなりそうだもんね」


「紙ヤスリでも無理そうなら、粗目の砥石の出番です」


「砥石!? 軽石の事?」


「それでもダメならグラインダーを使うしかありません」


「グラインダー!? ああ、電動のヤツとかあるもんね」


「そして、きれいに磨いた後に汚れを綺麗に流します」


「ふむふむ」


「そして、専用の液を塗った後、適温で焼いて全体を(酸化膜で)コーティングです」


「焼く!? ヨウナちゃん肌焼いてた事あるの?意外!」


「後はまた洗って、何時もの様に適量の油を塗って仕上げです」


「へ~・・・、けっこう肌の手入れには気を使ってるんだヨウナちゃん」


 などと話していた。そんな光景を康太は―――



 ”頼むから工具の話だとばれないでくれ”



   ――――と、思いながら見守っている

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バールのヨウナの物語 軽見 歩 @karumi

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