第11話 再会
ガラスを割って飛び込んできた黒い影に、僕は拘束されていた。
鼻と口がふさがれて、息苦しい中をなんとかもがく。
「もう! 暴れないでくれる? せっかく会えたんだからぎゅーってさせてよ」
え?
なんとか顔を動かして声の方に向ける。そこにはあのおっきなお胸のミリーさんの顔があった。
ごとりと拳銃が床に置かれる。サイトスコープが付いてるオートマチックってやつだ
そしてショートアサルトライフル、柄付きの手榴弾3つ、マガジン類、防弾アーマー、小型の走行ドローンと飛行ドローン各1種ずつ、そして多機能ベスト、ホルスター、その他小物多数が置かれた。
これらのものはミリーさんの背負っていたバッグから取り出されたものだ。
ミリーさんはあのはち切れそうなチューブトップの上にグレーの迷彩服をきている。胸の部分は収まらなくてどうしようもないのかボタンを開けているが。
なんだか軍の慰問にきたような格好だが、目は真剣だった。
「はい、これが武器。爆弾の解体道具は私が持っておくから、装備して」
「……なんか人を殺せる武器を持つと緊張するね」
拳銃など触ったこともないので、持つとその硬質感に圧倒される。
「緊張しなくていいわ。弾はみんなプラスチックの非致死性弾なの。そうそう死なないわよ」
「え? 普通の弾じゃないの?」
「残念だけどいくら緊急時でも訓練していない民間人に、多量の致死性武器弾薬は持たせられないの。非致死性でも死ぬときは死ぬけど、まだ自衛と自主的協力の許容範疇に入るわ」
「じゃあ、これも?」
僕が拾い上げた柄付き手榴弾を見て、ミリーさんがうなずく。
「そう、閃光手榴弾よ。音響弾は胎児に影響があるので持ってきてないの」
僕はまじまじと武器を見て、ちょっと早まったかもと思った。
実物を見ると、武器はどこか怖い。
人を撃たないのならわくわくするところだが、僕はこれからこれで人を撃つのだ。
「人を撃つことにためらいがある?」
ミリーさんが尋ねてきて、僕はうなずく。
「そうね、当然よ。でもその弾なら死ににくいから、撃っていいわ。相手が死んでもあなたの責任じゃない」
「……それはさすがにおかしくない? 銃を人に向けて撃って死んだら撃った人のせいでしょ?」
ミリーさんの瞳が、強い光を帯びた
「あなたは任意受諾の政府要請に、自発的意志で受諾したわ。ならば死亡確率を下げる非殺傷弾を使用することで、相手の生命保護に注意を払う義務を果たしていることになるの。だからそれで死んだら『ハードラック』。殺人ではなく事故。人殺しではなく、死に至る不運。そして死亡確率を低減させる義務をまっとうして、実施された政府要請事業に対しては結果責任は問われない。政府要請事業に対する免責事項よ。つまり、この弾を使うならテロリストなんて殺す気で撃っていいわ」
ぞくりと背筋に悪寒が上る。そんな僕を見てミリーさんがふっと笑った。
「デブリでだって超空間航行でだって人が死ぬときは死ぬわ。それは確率でしょ? 非致死性弾だって確率で死ぬのだけのこと。それに失敗での責任の不問をマザーは了承したはず。その失敗の中にテロリストの射殺を含めればいいのよ。あ、殺っちゃったぁって」
「ちょ、ちょっとちょっと!」
「でも殺す気で撃たなければ、あなたのねねちゃんが酷い目にあうわよ?」
その一言で魂が冷える。ミリーさんの目が冷たく輝いていた。
「私達だって撃たれてハードウェアに大きな損傷を負えば、AIが悪影響を受けることはありうるわよ? 最悪AIに修復不能なエラーが残ることだってあるわ。自分の忌避感を満足させるためにねねちゃんを危険にさらすなら、こんなこと今のうちにやめちゃいなさい。別に非難しないわよ」
口調はあくまでも軽かったが、内容が胸に深々と刺さった。
「……ごめん、覚悟が足りなかった」
うつむく僕に、けれどミリーさんは人差し指だけを左右に立てて指を振った。
「気にすることないわ。普通はね、訓練無しには銃を人に向けては撃てないものなのよ。善人であればあるほどね。だからこういうこと言ったの。非殺傷弾を支給したのも殺人忌避への対策だそうよ。さあ、おしゃべりはこのへんにして装備をつけよっか?」
そういうとミリーさんは僕にホルスターを渡してきた。
「こちら、第二艦隊所属ヴァンコール。対象の目標への侵入を確認した。……うまくいったようだな」
「こちら観光居留セツルメント警察、協力に深く感謝する」
「それにしても装備は荷物と簡易スーツのみ、
「予備役兵のじいさま達の発案だ」
「あの世代、根本的に頭のねじが飛んでるな」
「でもうまくやってくれて感謝するよ。そちらのドローンは大丈夫か?」
「問題ないな。ガイノイドを曳航とか無茶したものだが、なかなかに頑丈だ。でも整備班長にぶつくさ言われたぞ?」
「後で整備班長宛てにとっておきの飯屋とそこのクーポンコードを送っておくさ」
「おいおい、俺達には?」
「もう送った。仕事が終わったら、チェックしてくれ」
セツルメント地表から双眼鏡で覗くと、彼方で変針中のコルベット艦が見る。
その艦に向けて、警察官達と、レ・ヴァン・コン、フセインが敬礼を送っていた。
耐火気密扉のハンドルを静かに押し下げる。
静かにほんの少しだけ扉を開け、地上走行型のヴィークルドローンを隙間から中にそっと入れた。
ほとんど無音でドローンが走り始め、僕はそっと扉を閉めた。
ゴーグルにドローンからの映像が映る。
光量の足りない赤い照明、天井に向かってそびえるガラス円柱が向こうまで連なっている。
巨人の国の神殿に来た小人のような映像になった。
ドローンを動かしているのはミリーさんだ。ガイノイドは、ドローンの操作をしながら、別のことをするのに非常に適しているので、やってもらっている。
ドローンがやがて中央制御機に到達した。
登攀モードになったらしく、機械の壁をかちゃかちゃいいながら登っていっている。
やがて登り切ったところに、あの機械、タイマー付き爆弾があった。
タイマーが作動しているらしく、爆弾中央のランプが明滅している。
「もう少し辺りを見て、おかしなところがなければ、入ってとりかかろう」
「わかったわ」
ドローンが中央制御機から飛び降り、再び探索を始める。
しかし映像にはあの爆弾以外の異常は見当たらず、僕達は部屋の中に入った。
この部屋で、あの女テロリストは僕達を糾弾し、この爆弾を設置していった。
ということは、近くにテロリストがいそうだけども、物音はしない。
ねねさんがひきつけてくれているのだろう。
「さて始めるわよ。ゲイリーさん? そちらはどう?」
解体用の物品を地面に広げて、ミリーさんが微笑んだ。
「こっちはOKだ。では、最初にX線ムービーカムでざっと中を見てみよう」
男性の声が聞こえてくる。爆発物解体班のスペシャリスト、ゲイリー・ロデクさんだ。
ミリーさんが手のひらサイズのカメラをなでるように爆弾に沿わしていく。
するとゴーグル内に、内部の透視像が映され、すぐに演算合成されて、CGで内部構造が構築されていった。
縦に長い長方形の箱の上部に、小さな制御装置とおぼしきものがあり、その下にタイマーがつけられ、そこからいろんなコードが下に続いている。そして中央から下が爆弾本体。
爆弾本体は、ロードコーンのような上が丸い円錐形をしていて、丸い部分にコードが入っていっていた。
爆弾は金属シェルで覆われているみたいで、X線ムービーカムでは内部が映らない。
「……金属殻をもうちょっとスキャンしてくれないか?」
カメラを金属シェルに這わせるように、外部から映す。
ブザーが小さく鳴った。
「OK、だいたいわかった。X線ムービーカムをオフにしてくれ。被曝線量を減らすんだ」
そして少しだけ通信が途切れ、再度つながるとゲイリーさんの声が緊迫していた。
「よく聞いてくれ。これはたぶんミニニュークだ」
「……核爆弾! それが本当だったら爆発したら本人も巻き込まれてしまうのでは?」
「本人が核だとわかっていないのかもな」
僕の声にゲイリーさんがさらりと答える。
絶句するとともに、どこか納得する自分がいた。通常爆弾を用いてこのフロアを吹き飛ばしたところで上の階にも人工子宮がある。けれど核爆弾ならこの建物全部は余裕だ。
「核爆弾を渡した人は、テロリストごと、建物を、いやこの辺りまとめて全部焼くつもりなんだね」
「そうだな。人工子宮がまとめて焼かれれば、この国の存続基盤が揺らぐ。一人の犠牲で達成できるなら充分な成果なんだろうな」
「じゃあなおさら解体しちゃわないとね?」
計画者の鬼畜な発想を知って重苦しくなっていた僕達に、ミリーさんが明るい声で割り込んできた。
「さっさと解体を進めない? 核爆弾でも爆縮レンズに火が入らなければ、ただのプルトニウムの塊よ?」
「……ああ。やるしかないな。核ならば、俺達も無事ではすまんからな」
ゲイリーさんの声に気合いが入る。
「まず、蓋からだ。蓋にドリルで穴をあけるぞ。爆弾殻に重なる部分がいい。シェルは固いからドリルの貫通を考えなくていい」
「わかった」
僕がドリルの電源を入れて、ミリーさんが爆弾を抑える。ゴーグル内に穴を開けるべきポイントが示された。
「行くよ!」
蓋にドリルがめり込んでいき、穴が開く。
「よし、それでいい。次に液体窒素だ」
ねじを外し蓋をほんの少し持ち上げて、ライトをめぐらす。きらりと光る何かが見た。
「トラップワイヤーだ。長いコードがついた短絡クリップで上下を挟め」
ミリーさんがワイヤーをクリップで挟んだ。クリップが導通のグリーンに光る。
「よし。真ん中を切れ。そうだそこだ」
ニッパーを当てる。切るときに震えたのをミリーさんが支えてくれた。
「もう一度、ライトでトラップワイヤーを確認しろ」
今度はきらりと光るものはない。
「よし指を少し入れて、そっと縁をなでていけ。少しでも感触があったら、そこで止めてライトで確認」
蓋がすべてとれ、爆弾内部がさらされた。ロードコーン型の金属シェルが見る。
「リード線が入っていっているところをX線ムービーカムで映してくれ」
指示に従う。金属シェルで見にくいが、内部の配線構造がわかった。
ゲイリーさんが、少し考え込んだようだった。
そして……
「よし、全部のリード線を一撃でぶったぎれ」
「え?」
「聞こえなかったか? 爆弾本体に入っていっているリード線をまとめて全部切るんだ」
おおざっぱすぎると思った。
「うん、わかった」
ミリーさんが答えると、リード線を束ね、僕に大きめのニッパーを差し出した。
「えと、爆弾解体って、最後に赤か青かとか、そういうのじゃないの?」
「? とにかく切ってから話そっか」
と、ミリーさんがにべもなく僕を促す。
なにか恐ろしい感じがして、緊張する。けれど、ミリーさんがそっと僕のニッパーを握る手に手を載せてくれた。
「く……頼むっ」
ニッパーを渾身の力で握り込んだ。音を立てて、リード線が切れていく。
……何も起こらなかった。タイマー表示も消えている。
「おつかれさん、解体終了だ」
「は、はひぃぃぃぃ」
腰が抜けて座り込んでしまう。
「はっはっは。ミニニュークはくさっても核なのさ。放射線防御のためのシェルが厚いから爆破物の偽装は難しいし、爆縮レンズを作動させるための信管もデリケートだから、信管リードへのトラップは仕込みにくいし、動作停止は難しくない。だから信管へのリードを切るのが近道なんだ。それに……」
ゲイリーさんが笑いながら解説してくれる。
「それに?」
「おそらくこいつは解体への防御がそこそこでしかないから、本当ならもっとわかりにくいところに仕掛けるものなんだと思う。……でもテロリストはやはりこれが核と知らないんだろう。だからこんな目立つ制御機器に仕掛けたんだ。通常爆弾でも充分効果があると考えたところにな」
「……テロリストも情報伝達がうまくいっていないんだね」
「わざと知らせなかったのさ。末端の実行犯が詳しく知れば、このミニニュークの入手先がばれて、最悪報復核攻撃もあるからな。爆弾の情報を知らせないから曖昧な指示になって、こういうちぐはぐがでるのさ」
僕の言葉に返事を返すゲイリーさんの声に皮肉げなものが混じり、少しやるせない雰囲気が流れる。それを破ったのはミリーさんだった。
「二人とも、おしゃべりはほどほどにして、片付けて次に行こう? この調子なら、人工卵子製作室に仕掛けられたのも、ミニニュークの可能性は高いと思うよ?」
「そ、そうだった!」
僕が撃たれかかったあの部屋の、中の小部屋に取り付けられた爆弾も形状は似たような感じだった。普通に考えたら、二発目だろう。
ミリーさんは見ていないが、マザー経由のネットワークで、情報を取得していたらしい。
「そうだな。ああ、そのミニニュークはわずかだが被曝するから、そこに置いていけ。制御系のチップ、そうそれだ。それにドライバーで穴をあけろ。そうすれば解体した残骸を再利用できなくなると思う」
ドライバーで右上部のチップに穴を開けると、僕達は工具類をカバンに次々と放り込み、ミリーさんがそれをかつぎあげた。
そのとき、部屋の向こう側の耐火気密扉が開いた。
僕はライフルを構え、ミリーさんが物陰に隠れる。
人影がよろめきつつ入ってきた。赤毛で長身のその姿は見覚えがある。
「フェンテスさん!」
思わず駆けだそうとして
「だめっ! そいつはっ!」
ミリーさんが叫んだので驚いて振り返って、その真剣な顔に愕然として再びフェンテスさんへと振り返る。
その手に拳銃があった!
「逃げてぇぇ!」
フェンテスさんの銃が火を噴く。
ミリーさんの言葉に弾かれるように、僕は体を投げ出し、跳んだ。
顔の左を衝撃波が叩いたように思った。
世界が止まったかのようなスローモーションの中、僕はミリーさんに飛び込み、柔らかな感触に抱きとめられる。そのままごろごろと転がり、人工子宮管の影に僕達は転がり込んだ。
「大丈夫? 悠人君」
「おい大丈夫か?」
ゲイリーさんの焦った声がする。
頭が真っ白になった。手足も抑えようもなく震える。歯ががちがち鳴った。
「……ど、どうして?」
「なんや、動きがよーなっとるなぁ。仕留めたと思ったのに残念や」
フェンテスさんののんびりとした声が聞こえる。
ミリーさんが僕の拳銃を奪って、フェンテスさんの声の方へ撃つ。
「ねえ、あんた。気持ち悪いからラロ(エドァルドの愛称)のまね、やめてくれない?」
どこかからフェンテスさんの声が聞こえる
「その声はミリーやんか。自分のセクサロイドなのに、よその男の味方するんか? やっぱり誰とでも寝るセックス人形はあかんな」
「あんたの? 私はあんたのものになった覚えはないんだけど? 私のラロは、あんたよりアレは小さめだけど、私のおっぱいが大好きで、愛し方もうまいいい男なの。ちょっとばかり大きいアレを馬鹿の一つ覚えで出し入れする能なしとは違うんだけど?」
ミリーさんの強烈な言葉に、フェンテスさんが息をのむ気配が伝わる。
「ダボがっ! クソ人形がっ! 首ねじ切って、犬のおもちゃにしてやるっ!」
そして、どす黒い怒りの声がかえってきた。
だが、ミリーさんは微塵も動じていなかった。
「私をおっぱいが大きいだけの馬鹿な人形とでも思ってた? あんた、顔は3Dコピーで偽造できても、アレの形も違うし、声紋も違うから、ばればれなのよ。演技するこっちの方が苦労するわ」
フェンテスさんがまた黙った。ただ強い怒りの気配だけは伝わってくる。
「おまけに私のあそこにマルウェア入りのクラッキングマイクロマシンをぶちまけて、
そう言うと震えている僕を彼女はその豊かすぎる胸に抱きこんだ。そして彼女がそっとウィンク。
「彼がたぶん潜伏協力していた破壊工作員、スナッチャー。全身を義体化して、対象の顔と指紋をコピーしてなりかわるの」
「じゃ、じゃあ、本物のフェンテスさんは?」
悲しげな顔をして、ミリーさんは首を左右に振った。
「……わからない」
そのわずかな悲しみの気配を、フェンテスだったものの怒声が断ち切った。
「いい気になるなよ! クソロボット! おまえの目の前でその小僧を苦しめて殺してやる! そして時間切れになってニュークで吹き飛ぶがいい!」
「そんなことをしたらあんただって!」
「ぶわぁーかっ! 俺はな、ミニニューク爆発後でも生き延びられるんだよ! てめえらみたいな雑魚じゃねーんだよ、雑魚じゃな! でもおまえらは爆発の前に、惨めに殺してやる。人形! 小僧のアレとおまえのデブな胸をひきちぎって、けつの穴につめてやるぜ」
僕の言葉にフェンテスは笑った。
「さあ、来いよ! いつまでも隠れてると、爆発しちまうぜ!」
フェンテスの威嚇と挑発に、ミリーさんはあくまでも冷静だった。
「あいつのボディはきっと対NBC仕様ね。そのために偽装以外の性能が低くなって、私達に仕掛けてこないのよ」
「……でも全身を義体化って。それじゃこの非致死性弾で大丈夫なの?」
全身義体化がどういう性能なのかわからない。ただ外側はたぶんメカだろう。
だから非致死性弾がどこまで効くのか、大いに不安だった。
「正直、きついわね。でもね、手はあるわよ?」
「どうするのさ?」
ミリーさんが、そっと僕の頬に口づけをして、そして僕の顔をじっと見た。
「私があいつの足を止めるわ。悠人君はショートライフルで顔を狙いなさい。落ち着いて、胸から上を狙う感じで連射するの。セレクターはセミオート。セイフティは外してある?」
僕はごくりとつばを飲み込む。いよいよ、本当に人を撃たなければいけないときが来たのだ。
僕はライフルを確かめて、言われたとおりにした。
「じゃあ、拳銃は借りるわよ。閃光手榴弾を合図で投げて」
そう言うと僕とミリーさんは、人工子宮管の影で場所を入れ替え、ミリーさんは解体用道具の入ったバッグを肩から外して置いた。
そしてミリーさんは声を張り上げる。
「ねえ、そろそろあんたとつきあうのは飽きたから、私達は先に行かせてもらうわよ! あんたは警察に遊んでもらってね?」
「行かせると思うのかよ!」
「ポンコツサイボーグぐらいで私達を止められるわけないでしょ」
その言葉とともにミリーさんがうなずく。
セイフティピンを抜いて、柄付き手榴弾を投げた。
その柄から火花が吹き出し、手榴弾は思ったより遠くに飛び、僕は物陰に隠れた。
フラッシュのように世界が光る。
「行くわよっ!」
風を巻いて、ミリーさんが駆けだし、僕もそれに続く。
前方で二人が格闘する音が聞こえ、やがて何かが倒れる音がした。
そこへ向かって僕は駆けていく。そして
「撃ちなさい、悠人君! 私ごと! 早くっ」
「くそがぁ」
倒れたフェンテスに、ミリーさんがのしかかり、動きを封じている。
けれど僕は見た。フェンテスのすぐ横に、彼の落とした拳銃があった。
手を振り回したフェンテスが拳銃をつかむ。
ゴーグル内で、フェンテスの顔がターゲッティングされる。
「離せぇぇぇぇぇ、このクソ人形がぁぁぁぁ」
「うわぁぁぁぁぁぁ」
僕は引き金を引き絞った。
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