第4話 夜明け

「ほら、起きなさい」

「……」


――これは、王女様の声でしょうか。


「起きなさいってば」

「うーん、まかせなさいクラム、ここは私が……ぐはっ」


強制的に覚醒させられました。 何をされたかは王女様の名誉の為にもお答えできませんが――とにかく王女様に、叩き起こされました。


「まったく。 予想通りの寝坊助ね、貴方」


そんなことを言われては、流石に少しムッとするところがあります。 尤も、決して表には出しませんが。


「申し訳ございません。 あまりにもベッドが快適だったもので」

「良いわ。 それより貴方、どんな夢を見てたか思い出せる?」

「はい。 ――ええと、確か」


純白のローブみたいなのを着て、大きな杖を持って、クラムらしき人物と一緒に何かと戦っていたような。 何故かわかりませんが魔法を使っていて、それがとんでもない威力だったのに全然驚いていなかったことも覚えています。


「啓示かしら。 いえ、その線はなさそうね」


そうそう。 何よりも驚いた点が一つ。

本来崇めるべき女神様を何たる不敬か、呼び捨てにしていたこと。


「なにそれ。 あなた本当は、不信者なの?」

「違います。 その点に関しては、絶対に違います」


流石に、ジョークのつもりだったのでしょうか。


「冗談よ、忘れて頂戴。 それにしても、貴方が魔法を、ね」

「父から護身用にと教わったものはありますが、あんな魔法は全く知りません」

「あら、奇蹟じゃなくて魔法なの?」

「奇蹟は専門外だそうです。 父は魔法を使うことができても、奇蹟はあまり得意ではないみたいなので。 付与エンチャントの応用で、祝福の奇蹟は使えますが」


心底驚いた顔をする王女様。


確かに、この国では奇蹟が主流だと聞きます。 しかし、魔法を使えた所で別に、異端として処理される等という事はありません。 むしろ、貴族が所有しているらしい『秘蹟』は、奇蹟と言うよりも魔法に近いものがあるのです。


「この国で魔法メイン、か。 エルフレア然り、変わり種はいるものね」

「――エルフレア? それはもしや」

「そう、あの魔女。 王族以外に唯一『ノベル』の姓を名乗ることが許された、この国きっての大魔女よ」


――奇蹟の国なのに、魔女がいる。 しかもその人は、王族にしか名乗れない崇高な名前の一部を、貰い受けるほどの好待遇。


私がこの国に対して疑問に思う点。 その一つ、大きな疑問がコレでした。





「アイツは本当に変人でね。 この国は奇蹟が主流だってのに、ほとんど魔法しか使わない。 だったら帝国とかに行けばいいのに、『見守らないといけない物がある』とかいって一向に立ち去ろうとしないし」


本当に変人の様です。 そういえば、一つ気になることがあったので質問を。


「ノベルの姓は、いつ授与されたのですか?」

「約五百年前。 聖王国設立当初ね」

「随分と長寿なお方ですね」


少なくとも500は越えてるそうです。 凄まじいですね。


「まぁ、ね。 噂によると自分の時間を止めてるらしいわ」

「そんなことができるのですね」

「アイツは色々とおかしいから。 ――そろそろ朝食の時間よ、行きましょう」

「はい」


頃合いを見計らって、アリシア様が私に声をかけてくださいました。

彼女に従って行動します。 朝食もまた豪華なものではあったものの、昨晩よりはやや控えめで、朝でも食べやすい料理でした。




「さて、行くわよ」


まるで姉にでもなったかの様な口ぶりの、私と瓜二つな王女様。


「ほら、早く」

「は、はい」


馬車に乗ります。 この街ともお別れですね。


私の村よりは随分と大きな街でした。 朝だと言うのに活気に溢れていて、あちこちから声が聞こえます。 日も登り切っていないのにここまでとは、正直驚きました。 私の村はとても静かでーーと言うよりも私の家が村はずれにあるだけなのですがーーこんな風な空気は未経験で、何故か楽しくなってしまいます。


「すごい街ですね」

「そう? あなたからはそう見えるのね。

言っとくけど、王都はもっと凄いから」

「そうなのですか? 正直、想像出来ません」


恐ろしくすらなります。 その様な環境に、これから数十年の間居続けるのですから。


「ま、数年もすれば完全に慣れると思うわ」


王女様がそう仰った直後に、馬車が動き始めました。


また、例のトークタイムが始まる様です。



「それで? 貴方の父親から、貴方は一体どんなことを教わったの、セレシア」


今日はお父様についての会話です。 クラムについてはネタ切れだったので、正直なところ助かりました。


「少しの魔法と、略式の祝福と、後は様々な教養です。 父が何故魔法を使えるのかはわかりません」

「そう。 そういえば貴方、母親はどうしたのかしら? 姿が見えなかったけれど」


うっ、痛いところを突かれました。 お父様に私の母親について聞いたところ確か、


「もう別れたというか、絶交状態だね。 会わせてやれないのは残念だけど、多分君ならいつか、巡り会えるんじゃないかな」


と言った風に誤魔化されてしまい、明言はして頂けなかったのです。


「ふーん」

 

それを聞いた王女様が、眉を潜めてこちらを見てきます。 


「……」

「……」


沈黙。


「……まぁ、いいわ。 良くないことを聞いたわね」

「……いえ」


どうしましょうか、この空気……。







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新編 幼馴染は聖女らしい。 せれしあ @kallon09

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