終幕までのコンコルド

終幕までのコンコルド①

 朝目覚めると、えーちゃんが電話をしていた。


「はい……ええ、ですが、それについてちゃんと説明します」


 声を掛けようかとも思ったけど、何か重要な話をしていそうだし、気を使わるのも悪い。もう少しだけ寝ているということにしよう。


「はい、それでは直接会って……ええ、それで」


 電話を切ったえーちゃんは、そのまま浴室の方へ向かった。


 そろそろいいだろう。何食わぬ顔をして起きていればいい。


 シャワーの音が聞こえてくる。えーちゃんが浴室から出るまで服を着ながら待つとしよう。


 昨日買った服を袋からだし、身に纏っていく。パンツ、ブラジャーを付けてから、ストッキングを履いて、最後にワンピースを前後に気を付けながら被る。これで気が上は終了だ。


 ワンピースは着るの楽でいいそれに、長さだけ気御付ければあ、あまりサイズを気にしなくても着用できるのが良い。こうも身長がちっさいと服選びも少し難易度が上がるのだ。そんな中でも割と融通が利くのがワンピース。結構ありがたい。


 ベッドに腰掛けて待っていると、えーちゃんが体をバスタオルで拭きながら出てきた。


「もう起きてたんだ」


「ついさっきだけどね。シャワーの音が聞こえてたし、待ってる間に着替えようと思って」


「そう、ごめんね、待たせちゃったでしょ」


「ううん、そもそも私が起きるの遅かったんだし気にしないで」


「そう言ってくれると助かるわ」


「それで突然なんだけど、今日は私の家に来てもらえる?」


 えーちゃんはそう言った。


「えーちゃんの家?」


 えーちゃんの家に一体何があるというのだろうか。


 このタイミングで呼ばれると、ふと思い浮かぶのが昨晩の事で、親への挨拶ということになるんだけど、恐らくというよりは絶対に違うだろう。


 もしかしたらさっきの電話と関係がある。いや、もしかしなくてもそうだな。


「私も付いて行くの?」


 でも、電話で飛ばれたのなら私は必要じゃない気がするので、一応そう聞いてみる。


「うん、ヒナは自分の家にも帰りづらいでしょう。だから、私の家に着いてきても大丈夫だよ」


 それは良かった。でも、次に気になるのはえーちゃんが大丈夫なのかどうか。


 さっきの電話の雰囲気から明るい話ではないのは間違いないが、えーちゃんはなんで家に呼ばれたのだろうか。


「それと、今日は何かと振り回しちゃうだろうから先に謝っておくね。ごめん」


「いつもは私が振り回しているし、気にしなくていいよ。今日はえーちゃんの言うとおりにするよ」


「ありがとう……さっそくなんだけど、もうここをでて、戻ろうと思うからチェックアウトすませて、早く新幹線に乗ろう」


「うん」


 荷物を慌ただしくまとめる。まとめるといっても、昨日来ていた服を適当にカバンに突っ込んだだけだが、とりあえずは出れるようになった。


「準備は出来た?」


 荷物を纏めて、とうに準備を終えていたえーちゃんが入口のドア前でそう言った。


「うん、なんとか」


 少し急ぎ足気味のえーちゃんに置いて行かれないように早足でフロントまで戻ると、えーちゃんはササッとチェックアウト処理を済ませていた。


「新幹線の時間が近いから、急ぐよ、陽菜」


 なるほど、そう言うことだったんだ。えーちゃんにしては珍しくなんか急いでいたから、

どうかしたのかと思ったけど。


「あとどれくらい?」


 とりあえずどれくらい急いだらいいかくらいは知りたい。


「十分もない」


「えっ! 本当?」


 本当に時間が無かった。


「昨日のうちに券を買っておいてよかったって、本当に思っているよ」


 そう言いながら、えーちゃんに行きの時とは書いてある地名の位置が逆になっている切符を渡してくれた。


「ありがとう」


 受け取ったその二枚の切符を改札に通し、ゲートを通る。


 えーちゃんもその隣のゲートを同じように通る。


「ヒナ、スマホはここで捨てていって」


 えーちゃんが言う。完全に忘れていたが。そうだ、スマホをここに置いて行かなければいけない。私はスマホを取り出して、適当な袋に入れて、そのまま新幹線の待合場所にあるゴミ箱に捨てた。


「うん、ごめんね。ありがとう」


「いや、いいよ。気にしないで。決めていたことだし」


 ゴミ箱の中のスマホを気にするのもいいが、新幹線の時間も迫っている事だ、ここに留まる訳にもいかないだろう。エスカレーターを歩きながら登りホームに向かう。


 乗車予定の新幹線はもう既に到着していて、乗り込み可能な状態だった。


「早く乗ろう」


 そう言ってから、自由席がある車両まで移動して飛び乗った。

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