第6話

「喜んで」

 そっと額に軽くくちづけをすると、女の体がぴくりと震えて強張った。

 男に慣れてないのだな。

 帰ってこない不実な夫を待ち続けた女のいじらしさを感じて、コー・リンの心に熱いものがこみあげてきた。

「……あなたは自由で美しい女性だ。それを思い出させてあげよう」

「私の花を盗むの?」

「ああ、それは」

 コー・リンは、小さく笑うと彼女に囁いた。

「ひとつ、訂正していいかな?」

「何?」

「あなたは夫の愛人の花を盗んでこいと言ったね?」

「ええ。あの時は、あの女の美貌が憎らしかった。心に咲く花を摘んでしまえば朽ち果てると聞いて……」

「私は花盗に違いないが、花を盗んだりはしない。花を手折るなんてことは絶対にしないよ」

「……花を盗まないなら、あなたは何を盗むの?」

かぐわしい甘い蜜。私はそれしか望まない」

「それでは私の蜜をご所望?」

「いや、今宵はあなたが私の蜜に酔えばいい」

 たおやかな彼女の肢体を、コー・リンは柔らかく包み込んだ。

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