第8話伝道者であるわたしはエルサレムで、イスラエルの王であった。

(原文:第1章12~13)


12 伝道者であるわたしはエルサレムで、イスラエルの王であった。


13 わたしは心をつくし、知恵を用いて、天が下に行われるすべてのことを尋ね、また調べた。これは神が、人の子らに与えて、ほねおらせられる苦しい仕事である。




ダビデ王は、イスラエルを構成する12部族を1つの王国に統一し、エルサレムを王都に定めてイスラエル王国の礎を築いた。

ソロモン王は、ダビデ王の子である。

業績としては、父王ダビデが築いた王国を継承し、より堅固にするため、近隣王国と条約を交わし、政略結婚を重ねた。

その中でも、強国エジプトに対しては終始礼を尽くし、ファラオの娘を娶ることで良好な関係を築いた。

また、外国との交易を広げ、銅の採鉱や金属精錬など大きな事業を進めて国の経済を発展させた。

そして、統治システムとして、官僚制度を確立させ、国内制度の整備を行った。

大規模な土木工事を実施し、国内各地の都市機能を強化した。

フェニキアの技術を導入してエルサレムに壮麗な神殿 を建立し、これは、ユダヤ人の民族生活、宗教、生活の中心となった。


つまり、血統も、地位も、富も、そして業績にも秀でた、全ての力を供えた王ということになる。



そのソロモン王は、この地上世界において発生する全ての事例について、知りたいと思った。

そして、自らが使える全ての知恵を用いて、懸命に調べようと努力した。

しかし、それは「神が、人の子らに与えて、ほねおらせられる苦しい仕事」であった、つまり、神から与えられた苦しい試練だったと語る。


この地上で発生する事例の原因を、一人の人間が全て知る、知りうるなどは、ソロモン王ほどの知恵と力をもってしても困難。

しかし、そもそも、冷静に考えてみれば、そんなことは人間では無理なのだと思う。

有限である人間の命の中で、どれほどの知識を得ることができるのだろうか。

永遠に滅びない意識も肉体もない。

意識と肉体を永遠に保つ知恵は、未だかつて発見されていない。

結局、人間は、全てをなし得ず、知り得ないから、人間。

その不完全な人間であることを、自覚しなければならない。


時々、傲慢な態度で、地位とか財力を背景に「全てが出来る、全てを知っている」などと胸を張る人間がいる。

しかし、本当にそれを言うことができるのは、神だけである。


不完全な人間は、それを自覚し、傲慢を慎まなければならないという警句にも、思えてくる。

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