緊急星座が本当に見えるのか会議

ちびまるフォイ

THE・星座

星座の会の有識者はテーブルを囲んで重々しい空気を漂わせていた。


「えーー、それでは、星座を見直す会議をはじめます」


「議長、どうして見直すんですか?」


「最近の若い人に星座が浸透していないんですよ。

 夜空を見上げて星を見ても、"なんであれをつないだらヤギに見えるわけ?"

 という、苦情めいた問い合わせが後を絶たないんです」


「たしかに、昔の人の豊かな想像力ではそう見えるかもしれないですが

 我々の頭ではまったくそう見えませんからね」


「月にウサギが見えるというのも、まったく同意できませんし」


「ということで、星座を見つめなおしましょう!!」


全員の同意が得られたことで、プラネタリウムの天井に星が映し出された。


「今回は、あえて星座の名前を伏せています。

 名前を出してしまうと先入観でどう見えるかが濁りますから」


天井に見える星々から何に見えるかをみんなで考えはじめる。


「四角形ぽいから、スマホとかはどうだ?」


「いやさすがにそれはダメだろ……。ロマンチックがなさすぎるよ。

 夜空を見た恋人が"あれがスマホだよ"って言わせるのか?」


「つっても、この星を見てかけはなれたイメージにしてもダメなんだろ?」


有識者は腕を組んで、うーんとうなった。


「俺は臼に見えますね」

「私は箱に見えます」


「いや、それとは違わないか? 微妙にズレてるっていうか。

 もっとしっくりくるイメージがありそうなんだ」


「台、じゃないですか?」


「「「 それだ!! 」」」


物を取るときに足場にする台にぴたり一致していた。

もうそうなると、この星は台にしか見えなくなる。


「台で決まりですね。では次の星座を決めましょう」


ふたたび天井に星が映される。

今度はさっきよりもたくさんの星々がきらめいていた。


「今度はふくざつですね……釣り針、とか?」


「うーーん、なんか違うような気もします。腕を曲げた人、とか」


「人出すとイメージ遠のきませんか?」


有識者たちが悩んでいると、さっきの人がまた手を上げた。



「なんか……アルファベットの"P"に見えませんか?」


有識者たちは思わず拍手を送った。

それほどまでに、そうとしか思えないほどに、ぴたり一致していた。


「すごい!! たしかにPだ!! Pにしか見えない!」

「これ以外ないだろう! キャッチ―だし、完璧だ!!」


「決まりですね。ではこれはPということで。次に行きましょう」


最後の星座が天井に映された。

星を線でつないでいくと、誰がどう見ても同じイメージが浮かんだ。


「おい、これって……」

「あれだよな……」

「いや、絶対ちがうわよ」

「どう見てもあれだろ」


さっきの人がみたび手を上げた。自信たっぷりに宣言した。



「うんこですね!!」



全員が目をそらした。

みんなが思っていて言えなかったことをオブラート貫通で言ってしまった。


「いや……まあ……そうなんだけど……」


「うんこでしょ? そうとしか見えませんよ」


「他にも見えるんじゃないかなーー……」


「うんこ以外にないですよ!」


「もっとよく考えれば、別の案も……」


「別のうんこですか?」


「うんこうんこうるさいな!!!」


1年分のうんこ発言回数を消費してもなお、星座はうんこにしか見えなかった。


「昔の人はこれを見てうんこ以外のものを想像したんだから、本当にすごいですよね……。

 マンガ文化に毒されている我々はどう見てもうんこにしか見えないんだもの」


「で、どうするんですか? うんこで行くんですか?」


「そのまま出すのは我々の品位を疑われます。もう少しキレイな言葉にしましょう」


「便?」


「あーーそうですね。便でいきましょう」


「「 異議なし! 」」


有識者たちはとにかくうんこ回避ができればそれでよかった。

あまたの脱線と検討を経て、新しい星座の命名会議が終わった。


「いやぁ、新しく星座の名前がまとまってよかったよかった」








数日後、ふたたび有識者は緊急招集された。


議題はあとになってみんなが気づいた件についてだった。



「えーーみなさん、先日新しく決まった星座名

 "台座" "P(ピ)座" "便座" に変わる、新しい名称を決めたいと思います……」

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