第2話

俺の住んでいる八階とほぼ同様の景色が。


マンションだからたとえ階が違っても、眼に写るものにそれほど変化はない。


――本当に九階なのか?


俺はふらりと外に出た。


エレベーターの扉が閉まった。



803号室に住んでいた男性が、ある日突然その姿を消した。


仕事仲間をはじめとして、親族、友人、そして警察がその行方を追ったが、誰も男を見つけることが出来なかった。


そして半年が過ぎたころ、803号室にあたらしい住人がやってきた。


若い女だった。


引越しの初日、まだ荷物の片づけが終わっていなかったが、夜も更けてきたために女は寝ることにした。


女が電気を消してベッドに身をゆだねると、どこからともなく声が聞こえてきた。


見知らぬ男の声が、はっきりと。


その声はこう言っていた。


「出してくれ」


と。



       終

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マンションンの九階 ツヨシ @kunkunkonkon

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