陽炎の月蝕

永入空真

序章 血塗れの庭



ザワザワ、ザワザワ。


高校の廊下にある窓に、生徒たちによる人集(ひとだか)りができていた。それを見た教師陣が、訝しげに窓の外へ視線を向ける。


そして、窓の外にある光景を目にしてすぐ。

ギョッとしたような表情を浮かべては、慌てて現場へ向かって走って行く。




人集りの視線が集まる中心。

窓の外にある中庭には、3人の生徒が倒れていた。




それも…


ある者は足が、ある者は腕が、ある者は腹の一部が失くなった状態で倒れているのである。




血塗(ちまみ)れのその光景に、その場で嘔吐する生徒もいれば、ショックで倒れる生徒もいた。



「これで7回目だぞ…」



誰かがポツリ、呟(つぶや)く。



すぐに教師陣によって生徒は教室に戻され、警察が駆けつけてきた。しかし、警察からの判断は毎回同じ。





原因不明。





もうすでに、この1ヶ月間で7回も似たような事例が発生していた。

被害にあった生徒と教師の数は38人。

その全員が、体のどこかが失くなった状態で発見されていた。




「しかたない…警察もわからないというんだ。

これだけ調査してもらっていてわからないのでは…」


「しかし…っ!我々公務員があのような輩(やから)の手を借りるわけには…」


「そんなこと言ってる場合ではないだろう!

もう38人だぞ…」


「……やむをえない」




生徒全員を帰らせ、緊急会議を開いた教師陣が、深刻そうな表情で話し合う。

そして、一つの決断がされた。






「祓い屋を、…」





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陽炎の月蝕 永入空真 @Kuuma-Nagairi

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