赤と黒の記録
忠臣蔵
赤と黒の記録
まったく関係ない話だが、自分の陰毛を常食しないと死ぬ体質になる夢を見た翌日、推定8時間以上就寝したにも関わらずの寝不足の感じに
――ノーブラ?
そんな予感にたがわずというか期待通り、忘却の彼方にうず高く堆積され
――金を払うから素手で嬲らせてくれないか?
暗に
太平洋からマグロが引き上げられるようにして
「あれからもう、30年も経つのか……」
先手を打ったのは斎藤さんで、というか、あせらず追いつめれば勝てる戦いなので先に動くのは自明の理だが、それにしても動きすぎであって、《はい飯田さん、はいはいはい!》と手拍子を取りながらブン投げる円盤は飯田さんの脇をすり抜け、
《おい、起きろ》そんな声が聞こえたので目を覚ますと斎藤行夫が顔を覗き込んでいた。眠っていたらしい。《着いたぞ、貴様》《黙れ、殺すぞ》そんなやり取りを経て膀胱の決壊寸前を察知、宿敵を突き飛ばしあわてて下車し、付近の青々しい
二人の行方は、誰も知らない(下人のように)。しかしこのあと雅夫が芥子を使用するならば、それは斎藤行夫との決闘におよんで
「乳首えもんのうた
乳首テカテカ 乳輪デカデカ
それがどうした ぼく乳首えもん
乳首のせかいの ヒトがたロボット
どんなもんだいぼく 乳首えもん
チンミョウ ニュウトウ マカチクビ
チンポコテンガイ シシャボニュウ
デリヘル ジンソク ナカダシ ムヨウ
乳首えもん 乳首えもん
ホンワカパッパ ホンワカパッパ
乳首えもん
『乳首えもーん乳首たちにいじめられたんだ乳首道具出してよ!』
『しょうがないなあ乳首太くんは、はい、乳首コプター!』
『悪いな乳首太、この乳首三人用なんだ』
『キャーッ、乳首太さんのエッチ!』
『おう乳首太、乳首様の歌を聞け、ボエェー』
アンアンアン とっても大好き 乳首」
あのあと田村と泥酔してなおカラオケ店に直行した際、二人してデュエットした
――はうっ!?
数十年前のたまさかの
――え?
「だから、あるでしょ? ああ、脳が吐いてるな、っていう。口からじゃなくて脳が直接頭の中でゲボ吐いてのたうち回ってるっていうか、わかりづらいかなあ、なんだろうなこう、脳というか眼球の後ろの奥に
――はあ。
「わからないですよね……」
――すみません。何にせよ、頭髪が突然、ねぎになったということで、たいへんに辛い日々を送られたと。
「信じられませんよね(笑)。でも、これが現実なんで、信じていただくしかないですね」
――念の為、拝見させていただいてもよろしいでしょうか?(笑)
「いいですよ(笑)そう来ると思ってました。はい」
――わっ。
「どうです?」
――凄いですね。うーん、美味しそうですけど、嫌いな人にはたまりませんね、これ。
「でしょでしょ!(笑)もうだから、凄いですよね、もう。会社行ってる場合じゃないし、生きてる場合じゃないって、真剣に考えてましたからね、あの時は」
――嫌いな食べ物が頭に生えてきた人間は、人類史上、信夫さんが初めてだということですが。
「いやいや、そりゃそうでしょ(笑)。でも、最近は違うな、とも感じてるんです」
――え?
「僕みたいな人間って、日本でもけっこう増えてると思うんです。海外では以前からムーヴメントがあって、セレブがこぞってやっていたんだけど、ただここに来て、その潮流がいよいよ高まっている実感はあります。ありますよね?」
――そうですか。ところで、料理家として御活躍されている信夫さんですが、具体的にはどのような料理を?
もちろんねぎ料理だよ。当然である。ではどのようなねぎ料理か? もちろんねぎを使った料理だよ。当然である。ところで
「ンンンンンンンンンアッ!」
気合を入れて根こそぎ引っこ抜くと、頭皮に埋没していた根っこがブチブチと不吉な音を立てて地上にあらわれる。頭頂部が熱を持ち、鈍器で殴打されたように痛み、同様の作業を幾度も繰り返しているのに出血の可能性がいつも同様に意識をよぎってしまい、困る。荒々しく息をついて、やはり念のため頭皮を撫でると、ヒリッとした
「もちろん僕も、いきなりそんな
――毎日?
「毎日です。毎日ゴム手袋を捨ててました(笑)」
――(笑)。では、市販の除草剤を試されたのはそのあと?
「いや、さすがにそんなものを頭にぶっかけるのはまずいだろうということで、四年目だったかなあ、ねぎ自体もですが、夏になるとけっこう、虫が寄ってくるんですよね。それが嫌なのもあったんで、とりあえずキンチョールをかけてみたんです。そのときはなんとなく『枯れるんじゃないか』って思ってやったんだけど(笑)、実際、まあ弱りはしましたけど枯れるまでいかなかった。それに頭皮がすごく痛くて、といっても脳味噌がどうこうじゃなくて、とにかく皮が。でもそれ以後、ねぎの発育が悪くなってくれたかっていうと、ぜんぜんそんなことない。まーガックリ来ましたね(笑)
――つまり、除草剤も無駄だったと?
「無駄じゃなかったら、ここでインタビュー受けてませんよね(笑)そういうことです」
――その場合、頭皮に影響はありませんでしたか?
あったに決まっている。なにゆえ、さる
――それで、頭皮は大丈夫だったんでしょうか?(笑)
「いえ、大丈夫ですよ……(笑)、心配しないでください」
――つまり、先程の例だと、ねぎの臭味を消したら、美味しかったということでしょうか?
「まあ、だいたいそんなところですね。でもちょっと違ってて、なんていうか、僕はねぎの食感がだめだったんじゃないかな」
――というと?
「つまりですね、ねぎって本当、触るのもダメで、だからいつも厳重体勢で扱ってたけれど、それって要するに、あの繊維質に触れるのが嫌だったんだんですよ。だからもう、やけくそで酢漬けにしたものを食べてみたら、これが美味しい、いや、繊維質であることに変わりはないんですが、でもなんていうか、くたっとしてて、今でも夢に出てきますが、初めてねぎを口に入れたときの食感とぜんぜん違うんですね。本当に驚きました」
――なるほど。そして、その酢漬けが「信夫さん
「そうです」
――申し訳ありませんが、今お手元にお持ちですか? スタッフがスーパーを探しても売ってなかったんですが、写真を掲載しておきたいので。
「ああ、そうですか……まあ、製造し始めたばかりなんで、しょうがないですね。えーっと、あ、これです」
――万能ねぎじゃないですね。
「はい。本当はそちらを使いたかったんですが」
――頭部の?
「え?」
――頭部のねぎを使うつもりだったんですか?
「いえ、違いますけど」
――なぜですか?
「だって、不潔じゃないですか、そんなもの……そりゃ、念の為に有機栽培は、してるけど……」
――有機栽培?
「え?」
――具体的にはどういった意味なのでしょうか?
「え、いや、はあ……その、頭をシャンプーで洗わないとか」
――それこそ不潔では?
「何でですか?(笑)いや、だって、シャンプーなんかでねぎを洗ったら、それこそ食べられなくなるじゃないですか」
――食べるんですか?
「まあ、自分のものなので」
――それを売る、ということは?
「考えなかったですね。いや、考えはしましたけど、でも冷静に考えたらだめですよねそんなの、だから考え直しました」
――そうですか。
嘘だった。じつのところ信夫さんの持参した瓶は中身を入れ替えた
「別に死んでないんじゃ……」とその痛ましき訃報を【閲覧注意】などと
「あはうぅっ……」
かつてジークムント・フロイトという変態は
本題に入ろう。赤と黒の記録は、堂々たる二対の原色の塗りたくられた
赤と黒の記録 忠臣蔵 @alabamashakes
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます