13th area

なんだったっけ



なんだったっけと

ふと振りかえる

知っていたはずのものを

すっかり見うしなっている

とるにたらない生きかたの

ひとつにも満たなかったりする

落としたのか逃げたのか

気づかぬうちに捨てたのか

たわいないことでも

うしなえば悔しい

取りかえそうとあがくほどに

明日に乗りおくれる

切符はもう買ってしまっていて

さして高くもないというのに

使いきれずに損をする


なんだったかなと

振りかえってばかりもいられない

そのうちに

知っていたはずともわからなくなって

本当に知らない何かにばけている


オムレツを感嘆ものでうまく仕上げる

そんなやりかたは知りませんが

もしかしたらもっと昔は

知っていたのかもしれません

できていたのかもしれません

忘れてしまっているだけで


なんだったっけと

ふと振りかえる

それは一度でも知っていたことだろうか

ひとを愛するやりかた

あるいは愛されるやりかた

悔しいとも思えない今があるとして

知っていたはずのものなのか


オムレツを感嘆ものでうまく仕上げる

そんなやりかたは

きっとあなたも知らないと

おそらくは今もそうでしょう

あなたほど見事に

フライパンを焦がせるひとはいません

それは今も知っています

おそらくは今もそうでしょう


明日に乗りおくれるかわりに

ひとつたずねてみたいのです


あなたが触れていた

あの時のわたしの肌は

こぼれたしずくの

ひとつにも満たない何かは

ごくありふれた

ひとつに足るかどうかわからないような

とるにたらないこころの

ひとつでしたか?




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