とりとめなく



探して歩いて

とりとめのないまま

降ったり止んだりの曖昧な空

夜道の端から夜道の端へ

求めてためらって

雨と駆け引きをしながら

傘を開くタイミングを見失う

濡れてもいいんです

渇くことのほうが

よっぽど怖ろしい

本降りを待って

夜道を越えれば

そこにきみはいますか

仮にそうだとして

きみとはいったい誰ですか

面影さえ知らない

探して求めている

とりとめもなく


たいそうな名前などつけなくていいので

雨雫に濡れた互いの指

爪の甲と爪の甲が触れあうような

ただそれだけの

とりとめのない温度をください

傲慢な願いとしてそれがあっても

もしきみが同じように望むなら

傘を差す頃合いを見つけてしまっても

指だけは濡らしておきます

きみがいったい誰なのか

面影は雨中に浮かばなくても

その指先は

なんとなくわかる


多くを望まないことが

何の美徳であるとも思えない

もしかしたら

きみは言うかもしれない

もっと求めて欲しいと

強く深く欲してくれないかと

ただしその全てに

応えられる保証はないのだと

きみは言うかもしれない

私だってもしかしたら

いつかどこかで

言っていたかもしれない


爪の甲をそっと

きみへ繋げて

雨の滴りを伝わせる

面影も知らなければ

きみの望みだってわからない

そこにある指先は

なんとなくわかる


きみも誰かを探しているのでしょうか

とりとめもなく

指を絡ませたくて?

抱きしめあいたくて?

生命に溺れたくて?

それともただ

隣で息がしたいだけの繋がりで?

きみが探している誰かは

私なのでしょうか


一致しない望みをそれぞれに

それでも

夜道の先で出会ったなら

行き違うのも馬鹿らしくて




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