わけもなく



わけもなく寂しい

そんな使い古された言いまわし

あわよくばヴィンテージ

十一月半ば

これからもっと寒くなる

そんな見込み

人肌に触れたいと思いはしても

余計な面倒ごとまでくっついてくるから

さらりと流れるふうにはいかない

都合のいい望みが

わけもなさを生む


埋まる道理のない寂しさに

きみも蝕まれているとしたって

パズルのピースが

ふっと噛み合うように思えても

どうせ

触れるだけでは済まないでしょ?

たとえきみがそれで終わらせるつもりでも

ふわりと熱に浮かされて

したたかに脚をからませて

私がそれを望む

愛なんてそんな

よほど都合のいい幻想であると

わきまえているとしても

人魚でいることに

さほど不都合はなくて


つまらないほどに人間

生むことも育むことも

溺れることも乱れることも

触れ合いと慈しみも

ひとつどころでやってしまう

不器用に過ぎる

きみはきみのひとつきりで

そのうちのどれを望んで

どれがいらないのか


欲しいものだけさしあげますだなんて

真っ赤な嘘に踊らされたいなら

言ってみてもいいけれど


噛み合わないパズル

いっそ重ねて

バッジのピンでひと刺し

したたかに脚をからませる




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