星の夢
時々、世界のすべてが煩わしくなる。
人の声も、風の音も、自分の鼓動の音もうるさくなって、そんな、邪魔な音から逃れるように耳を塞いで目を閉じる。
自分の、血管の中を通る血の音から逃げられたことはないけれど。
そうして、静かな闇の中にいると、少しだけ宇宙に近くなったような気がする。
──昔、よく夢を見ていた。
目を開けると、そこは一面の闇と星で、温度のない風が吹いている。空気より軽いものを通して、どろどろと太鼓の音がお腹に響いてくる。すすり泣くようなフルートの音色が寂しかった。
きらきらと翼に星明かりを映しながら、とても大きな鳥が何羽も飛んでいる。闇と星が渦巻くソラの真ん中にはいつも誰かがいる。
その誰かが、とても寂しそうに見えた。
私は夢に潜るたび、彼に会いに行く。夢の中を飛んで、そこに行くことは簡単だったから。
まどろむ彼に、物語を持って行くのが私の習慣だった。今日あったこと、友達の話、テレビの話、面白かった本の話。
彼は黙って聞いていて、最初は少し怖かった太鼓と笛の音も、いつしか心地よいリズムになっていった。
無意識を泡にして、エーテルの海に浮かべて彼のところまで。
宇宙の真ん中、この世で一番綺麗なところへ。
神様はみんな嫌いだけど、彼は特別。いつも静かに私の話を聞いていて、宇宙の全てを見守ってくれるから。
──だから、ふと、思ったのだ。
彼に、この世界をあげよう、と。
もうこの星の結末が、誰にもどうしようもないものなら。
せめて、この
煩わしくも、愛しい世界を、夢に還してしまえたなら────
前日譚/白昼夢 玉簾連雀 @piyooru
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