獣耳好きな私は、異世界でも頑張ります! ~獣耳と魔法の異世界スローライフ~

実之息吹

第1話 プロローグ

私、一ノ瀬愛理はごく普通な16歳の女子高生。


高校は家から歩いて、15分くらいの距離を徒歩で通っている。


学校での成績は中の下くらいで、同じクラスの友人達と楽しく騒いだり、日々楽しく過ごしていた。


でも、そんな私には人にどうしても隠したい秘密があった。


実は私はオタク趣味で特に獣耳などのキャラクターが大好きなんだ。


その手の漫画は勿論、アニメ、ゲームなども見掛ければすぐに集めて楽しんでしまう。


一度で良いから、獣耳の頭を撫でたり、フサフサの尻尾を手でモフモフしたい!


でも、そんな現実はないことを私は知っている。


「はあ、そんな世界があれば今頃、私は獣耳の女の子や男の子の頭を撫でたり、尻尾を手でモフモフするのを堪能できたのになあ、残念。」


私はそんな想像をしながら、学校の帰りに近所の本屋さんに立ち寄って、目当ての小説を買ったあと、本が入った袋を右手に持ちながら帰り道を歩いていた。


暫く帰り道を歩いていたその時、足元に突然、赤い光が現れて、まるで異世界小説にでも出てきそうな魔法陣が私の回りに展開された。


「何これ? 赤い光が、魔法陣に身体が引き込まれるっ!」


咄嗟の事で驚いた私は手が滑り、本屋さんで購入した小説が入った袋を歩道に落として、その赤い光に引き込まれてしまった。


それからどのくらいの時間が経っただろう

か。


うっすらと意識が混濁する中、私は虚ろになった瞼をゆっくり開き、ゆっくりと身体を起こして目を醒ました。


「何ここ、まさか私が夢見た世界……!?」


ふと私は辺りをを見回すと周りに草木が生い茂り、空には月に似た丸い星が浮かんでいる。


あまりに綺麗だったのか、私は吸い込まれる様にその月に似た星を眺めていた。


暫くすると、少し離れた場所から光に包まれながら人影が現れた。


この人は見た感じ、身長170cm程の見た目が20代前半くらいの女性に見えた。


光が消えて、ようやく視認できたその姿を、私はまるで神話に出てくる女神の様に感じた。


髪型は金色の長いストレートの髪で、着ている衣装はまさに女神を思わせる、純白のキトンを彼女は着ていた。


「貴方は? ここはどこですか? 私、本屋さん でお気に入りの小説を買って家で読みたくて、帰り道を歩いていたのだけど……」


私の目の前に立っていた女神は言った。


「ここは貴方が住んでいた地球とは違う、そちらの言葉で言うなら異世界で、異世界アルカニアと言います。

私はこの世界を担当する女神サリアナと申します」


「もしかして、ここは私が夢見た獣耳と尻尾を持つ人がいたり、魔法が使えたりする世界ですか?」


「ええ、全ての人間がそうではありませんが、獣人はいます。

魔法も一般的に知られていますね。

貴方の世界の言葉で言うなら、RPGみたいな世界です」


それを聞いた私は、自分の中の気持ちを抑えられずに期待に胸を躍らせる。


それもそのはず、私は元の世界で好きだった獣耳の人が自分の目の前の世界にいることに感動しているからだ。


私は嬉しさのあまり、感極まって他に言葉が出てこない。


「お喜びの所、申し訳ないのですが、お話の続きをしても宜しいですか?」


女神に言われて私は、耳がカーっと熱くなるのを感じて、両手を顔に当てて俯いた。


「やだ、見ないで下さい! 私、今変な表情してるから、恥ずかし過ぎて死んじゃう!」


「そうなるのは仕方ないと思います。ここは、貴方が夢にまで見た世界ですから。」


――私が獣耳好きって事、何で知ってるんだろう。


そんな事を何故知っているのか、気になって私は女神に聞いてみることにした。


「実はこっそりですが、遠くから貴方を観察していました。」


「えっ私の事、見られてたんですか? なんか恥ずかしいです。」


真っ赤になる自分の顔が、更に赤くなって心臓がバクバクする。


「とても楽しそうに話していましたよ?」


まだ耳が淡い朱色に染まりながら、私は軽く深呼吸をして顔を上げた。


「すいません。

だいぶ、気持ちが落ち着きました。

それで、私が呼ばれた理由はなんですか?」


「実はこの世界では魔族が侵攻しています。

魔族は時に、人々の暮らしに迷惑をかけたり、酷いときには関係のない方々が殺されていまして」


「なるほど、私が呼ばれたのはそういう訳なんですね。」


女神は私の言葉に驚いたが、またすぐに穏やかになって


「思ったより冷静ですね。

まあ、あの様子を見たら、すいません。」


女神はそう言ってくすくすと軽く笑った。


「もう、笑わないで下さいよ!私、また恥ずかしくなって、どうにかなりそうですよ。」


「すいません。つい面白くて笑ってしまいました」


――この人、無意識かな?

また、身体が少し暑くなってきた。


女神はそう良いながら、すぐに頭を下げて謝罪した。


「話は大体わかりましたけど、今すぐには出来ませんよ。

私、この世界に来たばかりで、まだ右も左も分からないし、これから何をしようか考えていましたから。」


「構いません。今のところまだ、魔族が侵攻して、町や、村が壊滅するくらいの被害は出ていません。

ただ、状況が悪化しないとは限りませんが」


私は少し安心したのか、そっと胸を撫で下ろした。


「では、私もここに存在できる時間が少なくなくなって来たので、手短に話しますね。

もし冒険などで、危険があった時に、貴方が一人で対処できる様に、魔法とか異能の力などの特別な力を授けます。」


私は、何処かで見たような展開にワクワクしていた。


――これ、もしかして異世界小説でよくある転生とか勇者召喚とかの特典かな?

ヤバい、テンション上がってきたよ私。


「あの、貰える能力に何か、条件とかありますか?」


私は、貰える能力が何処まで可能な物なのか女神に相談してみた。


「言ってみてください。可能な限り答えます」


――えっ? どんな願いも叶うの? それなら、まずは狐耳と尻尾がある人がいる町に行くでしょ?

あとは、魔法を使って、魔法で魔物を一掃したりとか。


暫くして、私は最初から考えていた事と、もう一つ考えた事を女神に伝えた。


「そうですね、まずは獣耳の、獣人のいる町に転移させて下さい。

あとは、魔法を使ってみたいので高い魔力と、ある程度使える魔法もお願いします。」


女神は私の願いを了承したのか。


「では、希望通りに獣人のいる町に転移させます。

貴方に与える力ですが、初級・中級魔法はなんでも使えるようにします。

さらに希望があるのなら、上級魔法を二つ程、授ける事ができます。」


「どういう魔法があるんですか?」


「火、水、土、風の四属性、あとは、光と闇の合計六属性あります。」


「火と風の上級魔法をお願いします。」


――火は火力が高そうだし、風は敵を吹き飛ばしたり、逃げ道に使えそうだから、その二つかなあ。


女神は私の意見を聞いて、納得したのか


「分かりました。火と風の上級魔法を授けます。」


「私、こんなに沢山お願いしたのに、全部叶うんだなと思って、驚きました!」


そう言うと、女神はニコッと笑って


「私は女神ですから、ある程度の願いは叶えられますっ!」


――さすが、女神。私が考えてる事より、スケールが全然違うなあ。


私は心の中でそう思ったが、女神様の方も時間がなさそうなので、そっと心にしまっておく。」


「今から向かう獣人の町では、人間は非難の対象みたいに扱われるので、気を付けて下さい。」


「分かりました。あとは自分で調べて、確かめてみますね。」


暫くして、女神は私の前に近づき、手をかざして


「それでは、力を授けます!」


そう言ったあと、女神サリアナの手から白い光が現れた。


私は静かに目を瞑って、心に身を任せた。


「何これ、身体の中が熱くて軽く目眩が。」


暫くして、私は身体の中に糸のような物が全身に張り巡らされていくのを感じた。


「これが魔力の流れ? 何か変な感じ。」


それと同時に頭の中に新しい知識が浮かんでくる。


――これが、魔法を使う為の知識。


「まあ、知識はあっても、実践経験がないからあとで自分で修練しないとね。」


作業が終わったのか女神は、ふーっと額に付いた汗を手で拭うと笑顔で


「希望通りの力を全て授けました。あとは貴方の努力次第です。」


そう言いながら、女神サリアナは、ふんっと可愛く鼻息を立て、満足そうにしていた。


――何この可愛い生き物。

天使かな? あっ女神だわ、この人。


「それでは、転移を始めます。転移先は獣人が暮らす町ミランドルです。

分からない事はまだ沢山あると思いますが、異世界生活を楽しんで下さいね。」


そう言いながら女神は笑顔で手を振る。


私も女神に手を振って、お礼を言った。


「この世界に召喚してくれて、ありがとう。

これから私、頑張るよ! 空から見守っててね、女神サリアナ!」


私が、女神にお礼を伝えたのと同時に、転移魔法が起動した。


二人の周りに、大きな魔法陣が展開した直後、私は魔法陣の光の中に消えた。

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