エピローグ

第170話 最終話 大成、青葉を選ぶことを決意する

『・・・もしもし』

「あー、俺、大成たいせいだけど」

『ん?どうしたの?』

「今日、何か予定入ってるか?」

『うーん・・・特に入ってないわよ』

「あ、あのさあ・・・」

『たいせいー、ハッキリ言いなさいよ、それでも偉大なる人物の21代目なの?』

「じゃあ、ハッキリ言うけど、先週の日曜日に青葉あおばだけ連れていけなかった穴埋めを今日やりたんだけど、いいかなあ」

『うっそー、冗談で言ったのに本当にしてくれるの!?』

「ああ、俺は構わない」

『そ、それじゃあさあ、私にもシノロワールと小倉トーストを食べさせてよー。かえでちゃんとみどりちゃんは食べたんでしょ?』

「そりゃあそうだけど、それでいいのか?」

『いいわよー。大成が華苗穂かなほ先輩のような超セレブの息子なら「豪勢なディナーに連れていけ!」とか言うけど、平凡な庶民だからその程度でいいわよー』

「お前さあ、『平凡な庶民』はちょっと語弊があるぞー」

『まあまあ、そこは気にしない気にしない』

「わーかった。それじゃあ、時間は?」

『うーん、まだ着替えてないし、色々やる事があるから10時でもいいかなあ』

「りょーかい」

『待ってるわよー』


 それを最後に電話は終わった。


 今日はゴールデンウィーク最初の休日。でも、明日は学校があるから連休は明後日から。このポツンとした休日の朝8時頃、俺は青葉のスマホに電話を入れた。

 一昨日、俺と青葉は広内金ひろうちがね先輩の家で、広内金先輩と広内金先輩のお婆さんと共にトンデモナイ秘密を互いに共有する事となったが、広内金先輩が最後に言った言葉はあの時は有耶無耶うやむやのまま終わってしまったから、今日はでいる。

 今日は祝日とはいえ『めでたい焼き』は臨時営業日だ。その代わり、今度の土曜日から9日間連続で休みを取ると既に張り紙が出されている。考えようによっては土曜日の営業を今日に振り替えているとも言えるかな。

 あの日、広内金先輩が言いたかった事の意味は俺も理解している。でも、俺は広内金先輩には申し訳ないが青葉を選ぶつもりでいる。青葉の答えがどうなるかは分からないが、少なくとも俺は青葉が『イエス』と答えると信じている、いや、そう信じたい。

 約束の時間は2時間後、という事は『めでたい焼き』の開店時間と同じ10時という事だな。それまで俺は何をしてようかなあ。

 今日は祝日だけどBOUQUETブーケは営業日だから母さんは店に出る。爺ちゃんと婆ちゃんは朝から出掛けてるし、楓と緑もさっき一緒に出掛けたから、ここにいるのは俺一人だ。でも、誰もいないリビングでボーッとしてるのもなあ。

 でも・・・今日は色々な意味でボーッとしたくなる日でもある。ここ3週間ほどの騒動の原因がようやくわかって、心の重荷から解放されたからだ。

 結論だけを言えば、青葉の父親が俺の親父だと勘違いする元になったDVDと写真は、本当は出版社に送るはずだったのを間違って母さん宛に送った親父の勘違いだった。昨夜、親父から母さん宛に珍しく国際電話が入ったので、俺が途中から電話を代わって親父を問い詰めた事で全ての謎が解けた。

 親父は「あー、スマンスマン」とノホホンしていたから、正直俺は唖然としてしまったほどだ。親父にしては珍しい凡ミスではあったが、俺はそのせいで散々振り回されたのだから勘弁して欲しいぞ、ったくー。でも、結果的にゴッドマザーの嘘を見破る事に繋がり、青葉を茶番から救えたのだから良しとすべきなのかもしれない。


 俺はそう思いつつもテレビのリモコンを押して適当なチャンネルに合わせた後、コーヒーを作った。


 そのまま30分くらい経った。


 まだ10時には時間がある。だけど、テレビを見てるだけだと暇だなあ・・・


♪♪♪~♪♪♪~


 あれ?この音は着信だ、それも青葉からだ・・・

 何かあったのか?それとも「もう出掛けよう」とでも言ってくるのか?

 俺はそう思って何気にスマホを手に取った。

「・・・もしもし」

『あー、大成!願いだから手伝って!!』

「はあ!?」

『あのさあ、今日は黒松内くろまつないさんもいないし、お母さんも出掛けてるから、お爺ちゃんとお婆ちゃんが店をやる筈だったけど、お爺ちゃんの同級生が亡くなったって連絡が入ったから、お爺ちゃんとお婆ちゃんが急にそっちへ行く事になったのよー。そういう訳だからお爺ちゃんたちが帰ってくるまでの間、私が留守番をやる事になったけどさあ、今日に限って朝イチで予約の品が入ってるから結構忙しいけど、私一人だと『冷凍庫行き』が増える一方でね』

「それで俺に店を手伝えてって事かあ!?」

『おねがーい!お婆ちゃんも今日は4分の3どころか全額払ってもいいって言ってるからさあ』

「はーーー・・・りょーかい」

『じゃあ、お店で待ってるよ。お爺ちゃんたちはもう出掛けたからさあ』

「はいはい」

 青葉からの電話はそれを最後に切れたけど、やれやれ、どうやら俺は本当に呪われてるのかな。それとも、神様は俺に『青葉に告白するのはまだ早い』とでも考えてるのかなあ。

 ま、それを言っても始まらない。今は青葉の頼みを聞いてやろう。


 とにかく、青葉は俺の妹ではなかった・・・それだけで今は十分だ。





    俺は会長の幼馴染兼秘書兼下僕兼ボディーガード兼・・・兄貴??  完

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俺は会長の幼馴染兼秘書兼下僕兼ボディーガード兼・・・兄貴?? 黒猫ポチ @kuroneko-pochi

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