Govern the end

藤谷 晴真

序章

 *



 地球アース


 地球をアースと呼ぶのが主流になり、西暦が旧暦扱いとなってからすでに百年以上が経過している。

 世界は第四次世界大戦幻想事件の終結とともに、西暦ではなく幻暦げんれきというのが主流になった。


 幻暦、2世紀後半――西暦、23世紀後半。


 今から2世紀と56年前の庁長官達は、殆ど入れ替わることはしないでそこに在中していたというが、今の時代はリニアなんてものは普通となり”任期だから入れ替わらない”なんていうお堅い考えは許されなくなっている。

 そんな風中へと移り変わってきているため、かなりの頻度であるわけではないにしろ偉い立場だろうが入れ代わりは増えてきている。

 そんな現代では当たり前の話なのだが幻想事件より前、第三次世界大戦直後まで誰にも信じられてこなかった超越した力は認めらえるようになった。


 ――誰かが言った――


「魔法の様で、その人にしか使えぬ力がある。超能力の様でその力を持つものならだれもが使える術がある」――と。

 そしてその力は「魔能マビア」、使える者は「魔能師マビアス」そう呼ばれるようになった。

 そんな経緯を持つ「魔能マビア」には、二種存在する。

 それは「異能力アビリ」と「魔法マギア」だ。

 異能力アビリは、その人個人の力で似たような力であっても同じ力は存在しないとされているがそれは定かではない。

 一方魔法マギアは、魔能師マビアスならばそれ相応の力までのものなら誰でも使えるものである。 

 魔能マビアの歴史はもう既に219年も経っている。

 そんな世界になった地球は当然、魔法学と科学が共存している世界になった。

 生憎と、どちらも進歩しており科学技術は2世紀前よりかなり進歩しているといえるし魔法も発見当時よりもかなり進歩している。

 こうなったらもう予想はつくのではないだろうか。

 どこかの国日本天才科学者マッドサイエンティストが引き起こした最悪の実験事件により、人は限りなく人に近く契約者を絶対順守する人工生命体で作り上げてしまったのだ。

 しかもこの事件は西暦2056年に起こったもので、魔能師マビアスになれるものとして作られた。

 それ以来世界政府は、人工生命体「近人サニタ」を各国自由に生成してもいいと告げたのだ。

 いくら二世紀前の様に人口爆発や食糧危機に襲われていないとしてもそれは異様な宣言だった。



 幻暦265年1月11日、この日よりこの年の中で史上最悪な事件が開始される。


 ――「幼児誘拐事件」――



 年長ほどの年齢から小学校3年生ほどの年齢ぐらいの子供を中心として誘拐された。

 子供の見た目や性格の特徴はバラバラ、かと言って魔能師マビアスは全体の6割で他は魔能マビアを持っていない。

 捜査は当然、難航した。

 誘拐は5月末まで行われたが、それ以降ぱったりと止まった。

 一部では海外に売られたのではという説も上がってはいたものの、”人”の売買は禁止されていう上に裏の人間たちもしないと契りを切っているのだ。

 そのためその説はすぐに一刀両断された。

 誘拐された子供たちは見つからないまま時だけが流れ、その年の11月19日ようやく事件は進展する。


 その日警邏していた、警官が遅い時間にまだ幼い少年少女の二人を偶々見つけたのだ。

 本部に連れて行き迷子届がないか調べると少年の方は例の幼児誘拐事件で誘拐された子供だった。

 子供は警官にこう言ったそうだ。

「他にも泣いている子がいるんだ、近人サニタの方は分からないけど30人ぐらい」

 助かって間もない少年だが自分が案内するから早く助けてあげて欲しいと懇願したという。

 その少年少女の案内の下警官らが向かうと、その場所には100個の個室の並ぶ大きな空間があった。

 内73個の部屋には壺とベット、残りの部屋には誘拐された子供がいた。

 別室にはポッドの中に入ったままの近人サニタが大量にあったり、また別室には30名の近人がいたのだった。

 事件の主犯を取り逃がすという失態を犯したものの事件は死者73名、重軽傷者27名という結果となった。

 そして、主犯を取り逃がした失態は公表されないまま時は過ぎてゆく。

 こうして「幼児誘拐事件」は解決した事件として扱われるようになり、11月20日は解決日として多くの人が建物跡地の石碑に向かって黙祷を捧げるのだった。

 そういう形で世界は悪を含んだまま暫くは腹の探り合いで済むはずだった。



「行くぞ、相棒」


「はい、主」



 これは、第四次世界大戦後の多種が共存する異常な世界での少年少女が突飛なことをする物語である。

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Govern the end 藤谷 晴真 @haluma

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