第2話『スライム星人の肛門を狙え!』
序幕。あるいは、幕間。
「先生、助けてください。噂ではお腹のお薬の権威だとか」
「ははは、まあ名産品なだけです。で、どうしましたか?」
「食べた物が出てこないんですの」
「じゃあセロガン出しときましょう」
本当ならこれで、これだけで終わりの話だったのだろうけれど、今回は少し違っていた。いや、違っても出すのはどうせセロガンなのだ。
受診してきたのは、年の頃は青年期の始め。まだ若い少女だった。男むさい生活をしていたハヤテだが、デリカシーなる物を聞いたことがあるらしく、「食べたものが出てこない」と聞いて「はい便秘ですね、糞詰まりです、なので胃腸の薬出しときます」とは返さずに、件の静かな返しと相成ったわけです。
ところが。
「いや、わたしではないのです」
といわれては、ビックリするほかはなく。
「付き添いの方? いやしかし……」
「受付にはゲンさんしかいません」
とカミさんは首をかしげ、アゲハも瓶詰めのセロガンを手に小首をかしげる。
「じつはちょっと、こちらには来られないものでして」
「ああ、往診? でもお嬢さん、アンドロメダの人でしょう? 近所に病院あるでしょう?」
なるほどと、膝を打つ。
でも、往診だったらそれこそ話の通りにアンドロメダならいっぱいあるだろう。この少女は『セロガン』の噂を聞き、わざわざやってきたのだ。たまにいらっしゃる初見さんといったところ。
「いえいえ、それこそどの病院も匙を投げてまして」
「どんな便秘なんですか」
少女は頬を掻く。照れてるらしい。そりゃそうだ。
「私たちの住む星に移民してきた、スライム星人さんでして」
こうして、藪崎診療所、初の恒星系外往診が決まったのであった。
無論、ワープ費用は別料金。
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