第4話超戦場!? 戦国時代だけに!

黒い霧と化した元・戦国せんごくは、周囲に拡散するように消えていた。


「言い忘れたが、本物の戦国せんごくは無事だ。今頃自分の部屋で寝ている。特殊な電磁波を脳に送り込んでいるから、少なくとも一年は寝続けるだろう。なに、心配はいらない。布団フリーザーの中だから、安全に冬眠状態を維持できると思ってくれればいい。あの中にいる限り安全だ。材質は超合金。いかにも堅そうだろう? 元に戻す方法はただ一つ。ここにいる私の分身を全て見つけることだ。そうすれば、戦国せんごくはすぐにでも目を覚ますだろう」

いきなり後ろから声がしたかと思うと、また拡散していく黒い霧。


消えたんじゃなかったのか?


それよりも、とりあえず戦国せんごくが無事なのはわかった。しかし、タイム魔神はああいったが、果たして冬眠状態を無事といっていいのだろうか……?


――まあ、無事と考えよう。

少なくとも、元に戻す方法があるだけ無事といってもいいだろう。

布団なのか、フリーザーなのかわからないが、とにかく寝ていても大丈夫なことを信じたい……。

そしてそれを信じるなら、最悪の事態でも戦国せんごく自身の被害は最小限で済むと思うべきだろう。


元に戻す方法。

『分身をすべて見つける』

簡単に見えて、難しい。

あの時、飛鳥あすかをじっくり見ても分からなかった。


「言い忘れたことが、もう一つあった。心して聞け。心優しい私は、新しい管理人のお祝いをしてないことに気が付いた。そうだな……。これを、見破る事が出来れば、この先一年、この国の時代は手を出さないでおこう。この国の関係のある国にも手出ししないから、結果的にこの世界の歴史に介入しないということになるがな。どうだ、こう見えても私は偉いんだ。フフ。せいぜい頑張ることだ。だが、浮かれて油断しないことだ。この中に絶対に見つからない分身を一つだけ作ってある」

消えたかに思えた黒い霧は、再び反対側で実体化していた。どれだけ言い忘れるのかわからないが、意外とタイム魔神は律儀なのはわかった。


さらに、実体化するたびに戦国せんごくの髪型が変わっていく。最初はサイドテールだったのに、今回はポニーテールになっていた。


でも、せっかくの髪型を変えているのに、その違いが分かりにくい……。

しかも、髪が乱れるのが嫌なのだろう。垂れ下がっている部分以外、必死に手で押さえている。


天井に逆さになって現れなければ、その他の部位を手で押さえる必要なんてないだろうに……。


――まあ、その事を考えても仕方がないか。


とにかく今は、偽物の時代娘クレイオ――タイム魔神の分身だという――を探さなくてはならない。


そして、ようやく事態を飲み込めたのだろう。仲良く話していた時代娘クレイオたちも、ようやく警戒して睨み合っていた。


――最初から、怪しもうよ……。

できれば、和気あいあいとしていた時代娘クレイオ達には、そう言いたかった。


しかし、あらためてこうして眺めると、確かにわかりやすい分身から、難しい分身まで様々だ。

そして、こうして違いを見つけるために見渡しして、確実にわかったことがある。


それは――。飛鳥あすかの難易度は間違いなく高い。


これならいけるかもしれない。

幸い、わかりやすいのはとことんわかりやすい。あれと、あれと、あれ……。


あれ? あれー!?

おいおい……。あれをどうやって見分けろって……。


「そういえば、言い忘れていた――」

「言い忘れ過ぎだろ! 一回で言え! ていうか、ヒント! 特に最難関のあれのヒントくれ!」

再び姿を現した戦国せんごく


今度は三つ編みになっていた。

――本当は髪型を変えたいだけじゃないかと思ってしまう。

でも、確かに垂れ下がっているのは違っている。でも、それ以外を抑えているから違いが分かりにくい。


「仕方がないだろ、本当はもっと違う形で……。まあ、それはもういい。心配するな。これで最後だ。ちなみに間違えると、私の分身は本物と共に異世界に転移する。二度と戻らん。覚悟するんだな! それと、ヒントだな。よし、とびっきりのをくれてやろう! この戦国せんごくを見破った褒美だ。そうだな……。『最難関に設定したものは、見たままを忠実に再現した』とでも言っておくか。あはは! 期待したか? 残念だったな! 見破ることなど不可能だよ!」

笑い声が遠のく中、黒い霧はもうこの場のどこを探しても、見つけることはできなかった。

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