第3話忍ぶれど、話しにでにけり、その事は
食堂に入ってすぐ、異様な光景が目についた。
ほんの少しだけ、
でも、この眼で見るまでは信じられなかった。
――『拙者たちが増えたでござる。まあ、見ればわかるでござる』
ただそれだけ言って、走り出していた
たぶん、それ以上は説明できなかったに違いない。でも、それ以上の説明もいらなかった。
見ればわかる。
――そう、確かにその通りだった。
それぞれの
言い争う声が飛び交っている。中には、戦っている者もいる。
しかし驚くことに、一緒に仲良く話している者が数多くいた。
あっけにとられるとはこのことを言うのだろう。
ふと隣を見ると、
『見ればわかるといったであろう?』その顔にはそう書いてあった。
悔しいけど、言い返せない。
しかし、それ以外は何もない。昨日見た食堂のままだ。食堂をぐるりと見回してみても、特別怪しいものはなかった。
ん? なんだか、喉に小骨が引っ掛かっている気がする……。
よく見ると、明らかにおかしなものたちもちらほらいる。でも、それじゃない。
――でも、まず明らかなのを除去しておくか……。
そこに行こうと一歩踏み出したその時、ご機嫌な声と共に笑顔が二つこっちに向かってきていた。
*
「おはよう! 管理人さん! なんだか大変なことになってるんだよ」
「おっはよう! 精子変さん! なんだか大変なことになってるんだよ」
一瞬にして、そのイメージが伝わってきた。さっきといい、さすが
でも、明らかに意図したその言葉は、やはり正しておかねばなるまい。
「あえて言わないけど。朝っぱらから、人聞きの悪い事言うな!
「そのイメージって、思い込みだよ? フフ。アスカ、そんなイメージ送ってないよ? だから気になるなぁ。どんなイメージなのかなぁ。人聞きの悪いってどういう意味かなぁ? 委員会を省略しただけで、なーんで、人聞きがわるくなるのかなぁ? アスカ、とぉーっても気になるんだよ。んー?」
「うん! 気になるんだよ!」
「くそ!
相変わらず人懐っこい笑みを浮かべた
こうして間近で見ても、本当に見た目ではどっちが本物なのかわからない。
多少
幸いさっきのやりとりで、本物の
だからこそ、今わかった違和感の正体だけは、確かめないといけない。
「なあ、
僕の問いに、しばらく考えたあと、お互いに顔を見合わせている
それでも答えは出なかったのだろう。お互いに考えを巡らせている。
――大丈夫。多分、
「わかんないよねー」
「うん、わかんないよねー」
もう一度お互いに顔を見合わせたあと、同じ笑顔を僕に見せていた。
「じゃあ、なんでそんなに仲良しなんだ? 普通、自分に似たのがいたら、怪しいだろ? 服だって、色の区別はあっても、ほとんど変わりないじゃないか? よしんば顔が似ていても、服装とかが
「えー? だってこんなに可愛いんだよ? この色使い、最高だよ!」
「そうだよねー。ただ、もうちょっと
「ん!? そうだよ! それいいよ! 今まで考えもしなかったよ!」
――うん、やっぱりそうだ。
次々と文化を取り入れた
それは、あるとないをしっかり区別しているからできることだ。
「なあ、
「ん? なんでござるか?」
なぜか少し離れていた
「少し、小声で話したいんだ」
「ほほう。内密な話でござるな。甘い蜜の匂いがするでござる。――ん!? なにするでござる!?
首を差し出すように耳を向けた
おそらく、本物の彼女もそうなのだろう。
「おい、
「!?」
そう、もしタイム魔神が攻めてきたことを知っていれば、こうして和やかに過ごしているわけがない。そして、
一瞬、抵抗するのをやめた
「フフフ……。思った以上に、抜け目ないですね。新しい管理人。しかし、良いのか? こうしている間にも、時代は徐々に浸食されているぞ?」
「な!? まさか!」
一瞬の隙を衝かれ、
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