ありあまる荒れ野

ありあまる荒れ野へ向けて矢を放つ

虹のように伸びゆく炎が鏃を濡らす


地上の余剰では今宵も動物が焼かれている

あそこで縛られているのがおまえの娘である


夜霧を吐き出す不毛の科学が諧謔の踵を鳴らしている

夜露に錆びた覇王樹の肉は受話器のようにふるえるが


応答を冀う宛もなく

雨の中で雷が嘗めた案山子のように

風の中で磔にされた農夫のように


誰もが地上に根を張るために招集されたはずなのに

虹は焼かれる案山子や農夫の中

鳩のように温かい


瀝青を縁取る羽が

恒星に向けて飛び発った

輝ける日輪は皿

黒点にも供物にも似た


見上げる大人たちが口々に呟いた

「ありあまる荒れ野を鳩のように射落としたい」

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