黒い森林

大地を宿す樹木の一枝を

小指のように折り曲げ


葉脈を洗う陽光の一粒を

砂と油にすり替えた


黒い森林の狭間を行進する

若い肩に担がれた鉄は

地政学を夢見るばかり


夜に汗ばむ岩塩の一握に

脇腹に蓄えた獣脂がふりかかり


破れた靴底と失われた配達夫を

年寄りの腕に刻まれた識別番号を

夢ではなく現実で垣間見るために


夢のような時間を過ごしたが

なにひとつ変わらなかった


蚕のいない桑畑

虜囚のいない鉄格子のような

黒を求めて空が空咳を繰り返し


やがて

水膨れした

重たい雪が降り積もり


若木の細腕を

たやすくねじ切った

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