第二話

目を覚ますと手にむにゅっと柔らかな感触がある。

(マシュマロ?、いやいや、俺マシュマロ食べないからここにあるわけない)

「んぁ」

もう一度掴むと呼応するかのように声が聞こえる。

「・・・、っ⁉︎」

隣を見ると鈴川さんが隣で寝ていた。

他でもない掴んでいたのはマシュマロではなく鈴川さんの胸だった。

「ふぁ、あれ、、冴塚くん?」

「お、おはよう、なんで俺の部屋にいるの?」

「えっと、、多分寝ぼけて、かな?」

「次からは気をつけないと俺だって男だよ?」

「でも、冴塚くんなら、、」

「え?なんて?」

「う、ううん、なんでもないからっ」

鈴川さんが出ていった。

有希姉から渡された制服を着て、リビングへ行く。

「あれ、鈴川さんと蔵敷先輩は?」

「鈴川は日直、月曜日は生徒会の集まりがあるから蔵敷は生徒会に行ったぞ」

「そうなんですね」

「一応そこの宮野も生徒会だ」

「えっ⁉︎」

ひょこまへおほろかなくへもそこまで驚かなくても〜。ひなひにこへれもせいひょかいひょうちなみにこれでも生徒会長だよ〜」

生徒会と刺繍された腕章を付けた宮野先輩が朝ご飯をゆっくりと食べている。

「ならなんでここにいるんですか」

「いやぁ〜、そこは頼りになる副会長の蔵敷くんに任せておけば問題ナッシ〜ングっ!」

「いやいや、問題ありありでしょ」

「ある意味うちの生徒会は崩壊しているから安心しろ」

「どこに安心しろと⁉︎」

「いちいちうるさいな」

「それとこの寮もいろんな意味で終わってるよ」

「でしょうね。薄々気づいてましたよ。もうまともなやつって俺しかいないんですかっ!」

「いや私は自他共に認めるまともな教師だぞ」

「どの口が言ってるんですか。本当にある意味すごい教師ですよっ」

「そこまで褒められてもなんも出ないぞ、冴塚弟」

「褒めてませんっ」

「あ、そうそう。今日は時間がなくて弁当作れてないから昼食はコンビニで何か買って食べろ」

「戸締りお願いね〜、冴塚くん」

三人がそのまま寮を出た。

「はぁ、朝から疲れた」

作る気がしないからコンビニで朝ご飯を済ませることにした。

寮の鍵を閉める。

(はぁ、一日に二回も溜息か。幸せきっと逃げてるだろうな)

コンビニへ入ると少女が店員がもめている。

「君、いくらお金が無いからって店のものを食べるのはいけないよ」

「・・・」

少女が何も言わずに黙っている。

「す、すみません。が迷惑をかけたようで今日のところは自分が払うので許してもらえませんか?」

「ちゃんと教育してもらわないと困るよ。今回は許すけど次は警察だからね」

「はい、ありがとうございます」

自分の朝食、昼飯と一緒に少女が食べかけていたドーナツを買いコンビニを出る。

「ありがとう」

「俺は冴塚圭太、君は?」

「一条優亜」

「一条さん、なんで店の商品を買わずに食べたの?」

「食べたいから」

「・・・、はぁ。今度からはちゃんと買ってから食べること。いい?」

「分かった」

(本当にわかってるのかな?)

「やば、もうこんな時間か。俺は学校あるからもう行くけど、困ってるならここに来て。頼りになるかはわかんないけど優しい人達もいるから」

皓月寮の住所と地図を少女に渡し、学校へ急ぐ。


結局間に合わなくて、担任の姫野芽衣先生に職員室で怒られることになった。

「何故、私が怒っているか分かりますか?冴塚くん」

「転入当日に遅刻だからですよね?」

「そうです。理由は?」

「い、いやぁ、二度寝みたいな?」

「その辺にしてやれ、芽衣。そいつはなんたって皓月寮だ」

「なるほど、それなら仕方、、、なくないですっ!それは要するに管理人である貴方にあるんですよっ!有希先生。もう少し教師としての自覚を、、、」

有希姉と一緒に職員室を出る。

「二度寝じゃないだろ?」

「う、、」

朝あったことを全て話す。

「バカか、お前は。相変わらずお人好しだな。冴塚弟」

「ぅく。有希姉じゃなくて荒上先生そろそろ、冴塚弟はやめません?」

「そうだな、冴塚」

「お話中悪いですけど。冴塚くん、そろそろクラスへ行きますよ」

姫野先生が職員室から出てきた。

「は、はい」

「荒上先生は保健室へ戻ってください。東雲さんがいるでしょ」

「そうだな」

「はぁ、。冴塚くん、先に言っておきます。来週から体育祭があるのでクラスで誰がどの競技に入るかっていうのを決めないといけないからできるだけ早く決まることをすすめます」

「どういうことですか?」

「ま、まぁ、始まれば分かります」

「皆さん今日からこのクラスに転校生が来ます。入ってきてください、冴塚くん」

「は、はい」

教室へ入り、黒板の前に立つ。

「自己紹介お願いします」

「初めまして、神奈川から来ました冴塚圭太です。よろしくお願いします」

「ケーちゃんっ⁉︎」

突然奥の窓際に座っていた少女が立ち上がった。

「・・・?、、千枝?」

「やっぱり、ケーちゃんだっ‼︎」

走って飛びついてきた。

「知り合いですか?」

「はい、ここら辺に住んでた時の幼馴染みです」

「そうですか。では席は蘭城さんの隣にします」

「は、はぁ」


昼休みになり、自分の席の周りにクラスメイトが集まった。

「冴塚って部活どこ入るんだ?」

「いや、まだ決めてない」

「とりゃぁぁっ!」

千枝がクラスメイトととの会話に割り込んできた。

「ど、どうしたんだ?千枝」

「会いたかったよぉ、ケーちゃん」

千枝が抱きつく。

「な、何してんのよっ、千枝」

「幼馴染みと感動の再会、からの抱擁だけど?」

「はっ?冴塚くんもちゃんと断って」

「あ、うん、ごめん」

「藍華とケーちゃんは知り合い?」

「同じ寮だけど?」

「むっ、私も一緒がいいっ!」

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この修羅場的状況はどうすればいいっ⁉︎ 千神華夜 @kaya01

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