第3話 「プラーク!」

「私は陽気な虫歯ちゃん~。」


虫歯ちゃんは自分のことを知って上機嫌に踊っていた。以前は「♪」も語尾に付けていたが、残念だがやめてみた。


「虫歯なのに、喜んでいるよ。」


お手上げで呆れているのが透明な存在こと唾液様。


「見てください! 唾液様! 私には力があるのです!」


虫歯ちゃんは手を白い歯に当ててみた。すると白い歯に黒い斑点ができた。


「私は白い健康な歯を黒くすることが出来るのです!」

「そりゃそうだろう。虫歯なんだから。」

「私は魔法使いだったのです! ワッハッハー!」


虫歯ちゃんはスマホで検索して、自分が何者で、どのような能力を持っているのか知ってしまったのだ。



回想


スマホで検索した虫歯菌を読む、虫歯ちゃん。


「ふむふむ。」


ネットに虫歯菌は、こう書かれていた。


「虫歯菌。口の中の支配者。白い歯を黒く染める魔法を使う。上級者になると白い歯に穴を空けることも可能。虫歯菌は人々の崇め畏れられる存在です。」


ネットの記事とは、本当であり嘘のようなものである。


「おおー! 私は、口の中の支配者! 黒魔法を使う魔法使い! しかも白い歯に穴まで開けることができるなんて! なんて高スペック! さあ! 口を持つ者たちよ! 虫歯ちゃんを崇めなさい!」


完全に悪乗りしている虫歯ちゃんであった。虫歯ちゃんが口の中の支配者というのは、決して間違いではない。


「よし。虫歯ちゃんが、この口の歯の虫歯の進行度を分類してやる。」


説明しよう。歯医者さんに行くとおっさん歯科医が若く綺麗な助手と歯のチェックをすることを体験した人も多いだろう。C0というのがきれいな歯。C1、C2、C3と悪化し、C4は歯が崩壊状態をいう。


「こんな所で、実生活に役立つプチ情報を入れてくるなんて!? この虫歯、只者じゃない!?」


唾液様も虫歯ちゃんに関心するのであった。


「一つ目がC4。二つ目もC4、3つ目も・・・C4.・・・全部の歯がC4じゃないか!? ちゃんと歯磨きしろよ!?」

「虫歯のおまえが言うな。おまえが。」


ちなみに虫歯ちゃんは生まれたばかりの虫歯菌なのでC0をC1にするぐらいしかできない。虫歯のレベルを進行させるには時間がかかるのであった。


「まったく、どんな顔をしているのか見てみたいものだ。」

「でも、虫歯ちゃん。真面目に歯磨きをされたら、虫歯のあなたは歯磨き粉のついた歯ブラシで磨かれて浄化されるのよ?」

「え? そうなんですか?」


虫歯になりたくなかったら歯を磨こう。口の中をきれいにすれば、虫歯ちゃんとサヨナラできる。ちょっと悲しいね。


「虫歯! 最高! 虫歯! 偉い!」

「現金な虫歯だ・・・。」


思わず唾液様も呆れる虫歯ちゃんの変わり身の速さだった。


「私は不死身。虫歯ちゃんは永遠に不滅です。」


ちなみに虫歯ちゃんはきれいに歯を洗っても、次の食事を口の中に入れ、食べかすが歯に付着してプラークを形成して虫歯ちゃんは復活する。まさに不死身の虫歯ちゃん。


つづく。

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