第2話 「スマホを持っていたら悪いですか?」

「私は虫歯菌だったのか!?」


虫歯菌は自分が虫歯菌だと知った。しかも自分がいるのが人間の口の中だと。


「そう。あなたは虫歯菌なの。」


虫歯菌の初めての友達。神(ゴット)こと透明な存在の唾液様である。


「ニックネームを募集しなくっちゃ!」


自分の名前が分かったら虫歯菌は、ニックネームを多くの人々から募集しようと直感的に思った。


「どうして、そうなるのよ!?」


唾液様には虫歯菌の考え方が理解できなかった。


「響きが可愛くない。」


虫歯菌がニックネームを募集した理由は、名前の響きが悪いからだった。


「そ、そんなことで!?」

「名前一つで私の今後の人生が愛されて過ごすのかが決まるんですよ! 可愛くない名前の性で不良になってもいいんですか!?」

「不良の虫歯菌って、どんな虫歯菌よ・・・。」


唾液様は虫歯菌の自由奔放さに呆れる。


「ムシムシ? 可愛くない。キンキン? これも愛されない。」


虫歯菌は多くのハガキやスマホの画面で応募された自分のニックネームにダメ出しをしている。


「はあ!? この子、無意識に感じているんだわ!? 虫歯菌という自分が人々に愛されてないことを!?」


唾液様は届いたニックネームを見ている虫歯菌を見て感じ取った。まさに神(ゴット)。


「仕方がない。妥協して、1番多かった、虫歯ちゃんにしよう。今日から私は虫歯ちゃん~。ちょっと可愛いかも。」


虫歯菌のニックネームは、虫歯ちゃんに決まった。虫歯ちゃんは自分の新しい名前を実は気に入っている。ちなみに次点は、仮面ムシバーだった・・・お粗末。


「いけない! 虫歯菌に自分の存在意義を知られては!」


唾液様は、何をしでかすか分からない生まれたての虫歯ちゃんの行動を危惧した。


「カワイイ虫歯ちゃん~。そうだ! 虫歯ちゃんが何者なのか、検索してみよう。」


虫歯ちゃんはスマホの検索画面で虫歯菌を入力して、自分は何者なのか、なぜ自分は生まれてきたのかを知ろうとする。虫歯の自己を探求しようとする本能である。


「おかしい! どうして虫歯がスマホを持っているのよ!?」


唾液様が気づいた。虫歯がスマホを持っているのが、おかしいことに。


「今更言わないで下さい! どうせ言うならニックネームファン投票の時に言ってください!」


ごもっともな虫歯ちゃんの意見である。


「そ、それを言われると!? ・・・まさか!? 伏線を張っていたというの!? なんてずる賢い奴なの!?」

「えっへん。」


ドヤ顔の虫歯ちゃんに恐怖する唾液様であった。


「虫歯菌と。検索スタート!」


遂に虫歯ちゃんは自分のことを知る時がきたのである。虫歯ちゃんはスマホの検索ボタンを押すのである。


つづく。

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