蛹の夢
春風月葉
蛹の夢
私は今、夢を見ている。
それは私のこれまでの生涯の夢であった。
それは悪夢であった。
私は孤独であった。
異形の姿で生まれてしまったがために気味が悪いと蔑まれ、怖れられ、虐げられてきた。
地を這うことしかできなかった私は空に憧れた。
いや、逃げたかっただけかもしれない。
しかし、いくら空へ近づこうと木を登っても、届きなどしなかった。
空への諦めと共に、強烈な脱力感に襲われ、私の意識は途絶えた。
夢を見ていてわかった。
私はもう死んでしまったのだろう。
はっと長い夢から覚めると、自分の背にはしっとりと透き通るような薄い翅が生えていた。
きっと私は死んで天使に生まれ変わったのだろうと、空を飛べるようになったのだと私は喜んだ。
もしかしたら、私はまだ夢の続きを見ているのかもしれない。
慣れない翅を動かし、ゆっくりと地から足を離す。
飛べることを確認、実感し、私はさらに高く飛ぼうと、空へ向かおうとした。
コンッと何かに当たり、私は地に落ちた。
よく見ると私は四方を見えない壁に囲まれていた。
それから二週間も経たずに、私はまた死んでしまった。
翅はあったのに空へは届かなかった。
もう夢を見ることはなかった。
蛹の夢 春風月葉 @HarukazeTsukiha
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます