第8話「アスカ、来日」

 すこしこのへんで、ハイロック少年が中学生だった1995年を振り返ってみたいと思う。なにげに1995年というのはショッキングな出来事が多く、いろいろなものの転換期になった年であったように思う。

 まず1995年、1月17日、阪神淡路大震災があった。

 そして3月20日、あの地下鉄サリン事件があり、ニュースの中心はオウム真理教となった。松本智津夫が逮捕された際にはわざわざ学校の先生が授業中に教えてくれたような記憶がある。

 そのほかにも、沖縄の米軍兵士による少女暴行事件や、フランスの核実験なんていうのもあった。

 現在にもつながる話でいえば、ウインドウズ95の発売は地味に大きい出来事に思う。現在のパソコンOSがマイクロソフト一強になったのはこのころからじゃないだろうか。

 ちなみにエヴァには哲学要素が強いが、ソフィーの世界がベストセラーになったのも1995年らしく、エヴァが流行る下地のようなものが出来ていたのかもしれない。


 一方音楽では、安室奈美恵が大ヒットを飛ばした年でもあり、ここから小室哲哉が時代を作っていくことにある。安室のファッションを真似するアムラーが生まれるとともに、コギャルが登場し始めるのもこの辺りなのである。

 ちなみにコギャルとは小さいギャルではなく、高校生ギャルの略のことであったのだが、そんな事実はどこかに飛んでしまったようだ。


 しかし、エヴァンゲリオンを愛するようなオタクなハイロック少年はTKサウンドに興味が持てず、好きな歌はアニソンばかりであった。しかも1995年の頭には伝説のゲーム第4次スーパーロボット大戦が発売された。

 

これはもう大変なことである。


 俺ら世代で、エルガイム、ダンバイン、ゲッター、マジンガー等々をこの作品で知ったやつは多いはず。オタクの深化を進めてしまったのはこの作品ともいえる。そもそもガンダム~エヴァの間に目新しいロボットアニメというのはなく、このスパロボがなければ、本来俺たちの世代が先述したロボットアニメを知る機会はなかったように思う。


 そして、この作品が流行ったことで、スクールカーストでは、今でいう陰キャと陽キャの溝が広がったようにも思う。

 教室の片方では、SFにのめりこむ(あっ、競馬もあったな)少年達と、それを冷ややかな目で見つめる女子たちで別れていた。片方がミスチルやTKサウンドに魂を寄せるころ、僕たちはアニメタルの熱い魂に引き付けられていた。


 さて、前提がずいぶん長くなってしまったが、アスカ来日である。この英字副題は「Asuka Strikes」であって第一話の「Angel Attacks」と対をなしてると勝手に今解釈した。

 これは使徒がやってきたことより、アスカがやってきたことの方がシンジ君にとって衝撃であることを示してるのではないか。

 同時に当時の少年達にとっても、アスカが襲撃してきたことを示している。アスカとはギャルである。ギャルというのはオタクの少年達にとって最も手の届かない、忌むべき存在であると同時に、あこがれの存在だ。


 好きではなかったけれど、もしギャル側から話しかけられたらそれは何ともうれしいものだ。多分、そんな心境だったとハイロック少年は思うが、どうだったかな。


 ちなみにここでいうギャルとは、見た目を指してるのではない。学校生活を恋愛を中心に考える女子たちすべてを指している。彼女たちにとって、オタク少年はアウトオブ眼中であって、その瞬間から彼女たちは我々リリス現実逃避から生まれたリリンオタクとは違う存在、忌むべき存在となるのだ。

 ギャルたちとはまさに、アダムから生まれた使徒たちである。


 だからアスカの本質とは使徒だ。彼女は画面越しに我々に攻撃を仕掛けていたに違いない。レイに恋心を抱かせる、いやレイに限らず、純情まっすぐ型ヒロインに恋をする少年たちに対する強烈なアンチテーゼだったといえる。

 何度も言うが放映当時のこの8話の時点でアスカファンだった少年が果たしてどれだけいただろうか。

 彼女に人気が出てくるのはもっと後のことだと思う。


 そして、それは我々オタクたちが徐々にギャル達と社会的融和を果たして行くことを指していくのだ。(逆ともいえるが、まあずいぶん社会学的になってきたなあ)

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