第7話「人のつくりしもの」
この回は、6話の後ということもあって急に地味な回になったなあっていう印象がある。
エヴァンゲリオンに対抗して、日本の企業がJAなる巨大ロボットを作り、ネルフ関係者及び様々な関係各社に見せびらかすという話である。
そして日本人が作ったJAは、核融合炉を内蔵しており暴走して炉心融解の危機が迫ってしまう。
そこにミサトの独断でエヴァ初号機が投入され、最後はミサトの捨て身のJAに対する突入によって炉心融解は阻止されるというストーリーなのだ。
地味だ。
いや、今にして思えばなかなか考えさせられるところの多い、実に深い回であるが、ハイロック少年にとっては地味なことこの上なかったはず。
特に戦闘シーンがあるわけでもなく、しかもJAっていう巨大ロボは見た目がかっこ悪いうえ、最後迷惑だけをかけて終わってしまうやつなのだ。
うーん、少年受けがいかにも悪いなあ。
ただ、実はこの回は唯一ミサトさんが活躍する回なのである。6話まででミサトさんには、はっきり言って、まるでいいところがない。
シンジを傷つけてばかりいるどうにもならない大人。
しかも、私生活はずぼらでだらしない。
にもかかわらず、シンジの同級生に対してはかっこよくてきれいなお姉さんを見せつけるという、シンジにとって、軽蔑するような大人像として映っていたはずだ。
劇中で実際ミサトについて友人にそのように語っているが、これは実際に本心からの言葉であろう。
だがこの回では、ミサトは自分の身を捨てて、地域の安全のために戦い、シンジはそれを目の前で見ることになる。これによってはじめて、ミサトというのがかっこいい大人としてシンジに定義づけされたのだ。(自分ではノーリスクで命令だけする女というポジションから変更されたのではないか)
ミサトとシンジという二人の関係を見ていくうえで実は非常に重要な回だったといえる。
まあしかしここでさらに注目したいのは、ミサトの行動の意味についてである。
ミサトは何らかの信念に基づいて、自分と初号機を危険にさらしてまでJAの対処をしたのだが、実はこの行為は何の意味もなかったということが語られている。
JAの暴走事態も仕組まれたことなら、それが止まるということも仕組まれていた事態なのだ。ミサトがたとえ何もしなくても被害はなかったのである。
結局ミサトの命がけの行動には何の意味もなかった。
しいて意味があるとするならば、シンジ君に威厳を見せることができたということくらいだろうか。
さて、これは何のメタファーだろうか。
俺には、見せかけだけの仕事に対する警鐘のように思える。実は社会に出た際には仕事してる演技や建前だけがあって、実際は何もしてないなんてことがざらにある。
会議なんて言うのは最も顕著な例であり、すごく大変そうに会議の準備とかをするが、時間を削っているだけで、本当に中身のない空虚なものであることがほとんどだ。
まさに、無駄な努力。
会議に限らず、成果なんて出ないの知ってるはずなのに努力だけさせる例なんて言うのは腐るほどある。
戸口営業とかもそうだよね。
今回のミサトの行動にそれを無理やり感じ取ってやった。
ミサトの努力はぱっと見、命までかけた素晴らしいものであるが、実はやってもやらなくてもいいものだった。
それをもって、この回ではいわゆる無駄な努力を皮肉っているのではないだろうか。
俺は「無駄な努力なんてない」というきれいごとはさっさとこの世からなくなればいいと思うのだが。
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