第10話「マグマダイバー」

 ちなみにこの作品をエヴァの謎解き作品とか思われても困る。あくまで当時まさにシンジ君だった作者が、当時を思い出して書く回顧録であり、何なら遺書である。こんなことを書き出してしまった俺はそのうち死ぬんじゃないかと思う。

 っていうのもここ1週間体調不良だったのだ。

 一人は辛い、結婚したい……。


 結婚できないのはエヴァのせいだ!


 だからこのエッセイを書き始めた。


 さてマグマダイバーである。


 序盤クラスメイト達は修学旅行に行くのだが、エヴァのパイロットであるシンジ、アスカ、レイは第3新東京市にのこって待機なのである。


 まあオタクであるハイロック少年はここで可哀そうとか思わない。「役目のために修学旅行いけないとかかっこいい」とか思ってしまう。なんなら別に修学旅行とか行きたくないし、知らないやつと一緒に寝るのもやだし。

 むしろ好都合やん。

 ハイロック少年はなんとATフィールドの強いやつなのでしょうか。


 そんななか、どっかの火口でまだ目覚める前の使徒が発見される。

 そして、それを捕獲しに行くことが決定。


 それを見てハイロック少年は「うわうわ、わざわざ寝た子を起こしに行かなくてもぉ……」と思うのだった。


 案の定、捕獲しようとした瞬間、使徒は孵化して、それをつかまえに行ったアスカの乗る2号機はピンチに陥いってしまう。

 それでも何とか謎理論でなんとか使徒を撃破することに成功したのだ。

 細かい状況はぜひ本編をっていうか、見てないやつはこのエッセイ見てないと思うけど……。


 だが、アスカはマグマの中に沈んでいってしまう。

「ここまでか……」

 とあきらめる瞬間、オタク少年の希望である初号機シンジがマグマに潜り、沈みゆくアスカに手を伸ばして、アスカを救出するのである。


「バカ、無理しちゃって……」

 とはアスカのセリフ。

 

 「何じゃこりゃーかっこよすぎるだろー」というのは中年ハイロックの感想である。しかも記憶をたどるハイロックの感想である。


 当時の少年ハイロックはただ冷静に「いやいや、こんなん初号機も死ぬでしょ。じゃなかったら弐号機が装備かためた意味ないし」と思ってたはず。なんて嫌なガキなんでしょう、デブのくせに。


 自分の命をはって、アスカを守りに行く。


 これってさあ、たぶん男の夢なんだよね。決して手の届ないギャルに手を伸ばすためにはどうするかって、そりゃあ、まあ命がけでそいつを守るとかして、恩を着せるとかしかないわけよ。

「おれはさ、お前のために命はったぜ!そういう、俺に対して、お前はどう思うんだ?顔とかルックスとか関係ないだろ?俺に惚れるだろ?」

 ってそういう風に言いたいんだよ、もてない男はさ。


 で現実にさ、俺はかなりこの呪いにかかってるわけよ。

「まごころを君に」ささげれば、ついてきてくれるはず! そう思って行動してきたやつは多いはずなんだよね。


 しかしそれはすべて男の幻想AIRってわけ……。

 しまった。

 第3話の時点で映画版までの感想をすべて言ってしまった気がする。


 とにかくこのマグマダイバーの最後はいかにももてない男の持てるための妄想なわけ。その妄想を絵にすることで、当時の俺たちを夢中にさせたの。

 この状況だったら、かっこいいじゃん、持てるじゃん。そういう風に男たちに思わせた。


 でもそれこそが残酷な天使のテーゼだったわけだ。


 実際の天使たちは、恩とかそういうことは関係なしに動いていく、そんなことに気づくのはハイロック少年が相当時間を経ってからなのである。

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