第9話「瞬間、心重ねて」

 なかなか心は重ならないのだと、アラフォーになってからは本当にそう思う。


 それはともかく1話の次に9話に飛ぶという、まるでハルヒのテレビ版のような話の進め方をするのである。


 これ最初に見たのが9話とは書いたのだが、もしかすると7話かもしれない。ビデオ(ベータ)でとってあるのが9話なだけで、もしかすると前だったのかも。

 とにかく、でも覚えてるのは第9話という前提で話を進めよう。


 まずオープニング映像から衝撃を受けた。


 何がって、あんなに音に合わせてカット割りする作品というのを、今まで見たことがなかったからだ。

 意味ありげな用語を、音に合わせてフレーム単位で視聴者に見せていくという、それだけでもう中学生男子は『かっけー』と思うわけである。オープニングだけで、やられてしまう、オープニングというにはそれはあまりに新しすぎた。

 大体歌が格好良すぎた。

 歌詞を紹介したいくらいだが著作権の関係で遠慮しておこう。当時中2のまさに中2秒をくすぐる言葉しかない。

 テーゼ→? パトス→? 

 わかんねーけどかっこいい! 


 あとロボットアニメなのに、ロボットの名前が入らないって時点でちょっとかっこいい感じだしてたな。まあ珍しくないんだけどね。

 大のCLAMPずき(モコナ派)の俺としてはレイアースの時点で『ゆずれない願い』が確か200万越えしていたので、アニソンなめんなやと思ってた気もする。

 だめだ、CLAMPの話だけでも、50000字越えのエッセイになりそうだが、置いておいた方がよさそうだ。


 オープニングですっかりエヴァに虜のおれだが、意外にもアスカに対して共感をもてていなかった。なぜか今でこそ、アスカの方が人気があるが、当時リアルタイムでエヴァを見ていた人間でアスカを好きだったやつが果たしているのだろうか。


 はっきり言って当時のアニオタは、現実の女が好きじゃないから、アニメに走っているのである。そんな中、突如現れる茶髪コギャルの惣流アスカ・ラングレー。


 アスカはまず、なぜかシンジと同居することになり、シンジの部屋の荷物とかをすべて片付けようとするし、「あんたはお払い箱ね」と言ったりする。


 憎悪の対象でしかない。


 少なくとも当時のハイロック少年にとってアスカは「なんだ、このくそ女」である。しかもことあるごとに、シンジを蹴り上げるし、こんな奴と一緒にいるのはマジ辛いわとおもったはずだ。

 同居出来てうらやましーとかはマジで思わない。

「がんばれ、シンジ―!」

 と純粋に当時はそう思っていたように思う。


 アスカというのはギャルである。ここでいうギャルというのは、中学校のクラスにおける主流派であって、女にも男にもモテるやつである。カウントダウンTVを見て、最新の音楽をおさえ、ファッション雑誌を見るやつら。

 ちなみに男は、ホットドッグプレスを読む、一方俺たちオタクはニュータイプを読むか、競馬王で最強の馬を作ろうとするかだった。


 オタクにとってアスカというのは、決して届かない太陽なのだ。

 9話時点では、アスカは憎悪の対象であっても、恋の対象ではない。それが当時多くのオタク少年の総意であったのではないかと、俺は推察する。


 そしてそんなアスカとシンジはシンクロ(共同作業)して、使徒と戦わなければいけない。これは拷問である、なぜレイじゃないのか!?

 絶対向こう(ギャル)だって気分を悪くするし、オタクとしては引きこもって接触したくない!とそう思ったに違いない、いやシンジは絶対そう思ったはずなのだ。

 ちなみにハイロック少年なら間違いなくアスカと一緒に共同作業をしたりはしない、怖くて怖くて、どこかに逃げるはずである。


 ところがシンジ君はぴったりアスカと心を重ねて、使徒を倒すのである。

 「なんだ、俺たちが同族だと思っていたシンジ君は実は同族ではないのかもしれない」と当時のハイロック少年が思ったかどうかは確かではないが、今思えばなかなかオタクを裏切る結果である。


 さて、肝心の戦闘シーンだがこれまた衝撃的である。

 きっちり62秒で戦闘シーンを終わらせるということをやってのけた。


 戦闘シーンと言えば長くて当たり前、引き延ばしてなんぼであった。当時のアニメと言えば主力はジャンプ漫画か講談社である。

 ドラゴンボールと言えば戦闘シーンでの引き延ばしは当たり前であった(気をためるだけで5分)し、幽遊白書もアニメ版では暗黒武術大会をかなり長く放送し、ユウスケが霊ガンを5分以上打ち続けるとかしていた。

 セーラームーンだったら、変身時間に1分以上かけるし、当時は他にも、数々の変身少女アニメがあったように思う(ナースエンジェル何とか、なんだっけ)


 そんななか、音楽に合わせながら62秒できっちりまとめ上げた。

 ご都合主義以外の何物でもないが、当時の中学生に与えた斬新さは計り知れなかったのである。

 「音に合わせて戦闘を決めるとかあっていいのか!」


  少なくても少年ハイロックはこの9話によってすっかりエヴァ好きになっていくのだった。中学生当時は、人間の心情より、はるかにロボット戦闘シーンの格好よさが勝つのである。

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