最終話 Eternal Muscle Love
「どうしたんだ! 久美子ちゃん!」
喜太郎くん…っ!
何故だろう、今は喜太郎くんを上手く見れない…
「なんじゃあ… この青年は…」
「あ、喜太郎と言います。ムキッ!」
「あ、あのぉ… 私の彼氏です…」
「なるほど、そういうことかの。」
お婆さんは何かを察した様に喜太郎くんの方を見る。
「喜太郎くんや、久美子ちゃんは今から遠い外国に行くんじゃ。そこの人々を助けるためになぁ。二度と会えないかもしれないんじゃ。」
「なにぃーっ!? 久美子ちゃんが遠い人々に行って外国を救うだってー!?」
「聞いてた?」
「あ、す、すみません。耳にプロテインが詰まってました。」
喜太郎くんも驚きを隠せていないっ…! 私だってそうなんだから…
「…そして僕は久美子ちゃんと二度と会えないかもしれないと?」
喜太郎は静かに尋ねる。
「そういうことじゃ…」
お婆さんは静かに頷く。
「……ないでください。」
…え?
「ふざけないでくださいよ! 僕はさっきのやり取りを聞いてなかったか良く分かりませんでしたが、日本に帰ってこれないことを説明しましたかッ!? 僕らと会えないことだって説明しましたかッ!? 最終確認もしましたかっ! 僕は彼女と離れたくないッ! 」
喜太郎くんが感情を爆発させて叫んだ。
「そういやわし、最終確認しとらんかったのぉ。」
お婆さんはこっちを振り向いてこう言った。
「久美子ちゃんは、ついてきてくれるかの?」
私は静かに首を横に振った。
「いいえ… 行きたく… ありません…」
「そうか…」
お婆さんは残念そうだ。でも私だって、自分のために生きたい。人のことを助けたりするけども、自分の全ての犠牲にしてまで全てを他の人に捧げるなんてできない…っ!
「方法は… あります。」
喜太郎くんが口を開いた。
「方法じゃと… なんの?」
「久美子ちゃんの代わりになる… 方法です。」
「まさか、喜太郎くんが来てくれるのか?」
「細かく言えば違いますが、大体合ってます。待っててください。」
喜太郎くんは足を少し開き、力を溜めだした。
「はあああああああああ…!」
数分経って私は喜太郎くんの変化に気づいた。
「喜太郎くんの筋肉が一点に移動している…?」
喜太郎くんの全身のムキムキが左手の甲に集まっていっている…! つまり、筋肉が移動している!
「はぁっ!」
喜太郎くんが叫ぶと、集中していた筋肉が大砲によって打ち出された砲弾のように喜太郎くんの体から放出され、形を作っている…
「まさか、こんなことが…」
お婆さんも驚いてそれを見ている。
筋肉は人間の形になった。喜太郎くんのような形に。
「ハァ… ハァ… お婆さん、こいつを代わりに連れていってください…」
「プロテイン… キライ… ヤツ… ホロボス…」
筋肉で構築された喜太郎くん(喜太郎β)がなにやら呟いてるけど、私達は気にならない。
「ねぇ、喜太郎くん。さっきのは…?」
「筋肉増強病の症状の応用だよ。僕の全てのムキムキ要素を吐き出した。ついでに筋肉増強病自体もね。」
喜太郎くんの体はムキムキがなくなり、細くなっている…
「あ、ありがとう喜太郎くん。これで世界が平和になるわい。」
お婆さんはそれを連れてどこかにいった。
「喜太郎くん、無茶したね。」
「うん、まぁ、人のためだし大丈夫だよ。」
喜太郎くんは、ホントにかっこいいなぁ。
そして数ヵ月が経ち…
私は二年生に進級! 一学期最初の日!
「遅刻遅刻~!」
私は寝坊しちゃってプロテインを食べながら登校中! 目指し時計を噛み砕いたのを忘れちゃったの!
ドンッ!
「キャアッ!」
「うわっ!」
曲がり角で男の人とぶつかっちゃった!
「って、喜太郎くんかぁ!」
「や、やぁ。久美子ちゃん。」
喜太郎くんはあのあと筋トレを頑張ってまた同じ体を手に入れたの!
「二人とも遅刻しそうだね! 喜太郎くん、走ろう!」
「そうだね久美子ちゃん! 急げ~!」
私の筋肉は、次はどこに連れていってくれるのだろう!
完
参考 Wikipedia
『恋の痛みは筋肉痛 season2』へ続く。
恋の痛みは筋肉痛 あ @ma-akyaru
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