結婚式、婚約式、初夜②
披露宴が終わったら、ふたりは
今回は文学作品からの引用が多めです。
ご紹介するのはイタリアの文学者、ピエトロ・アレティーノ。攻撃的な内容の手紙でも自分が書いたものには必ず署名したことから、ジャーナリズムの元祖と呼ばれています。権力者を批判して数多の敵をつくり、殺害の脅しをかけられたことも。1556年、ヴェネツィアにて没す。一説によれば自分で思いついた策略がうまくいったので笑いが止まらなくなり、椅子ごと後ろに倒れて死んだとか。
『ラジョナメンティ』は彼による1535年頃の作品です。
主人公のナンナは修道女から人妻をへて
すでにご存知かもしれませんが、昔は初夜の翌朝にシーツを窓から垂らして見せびらかすことがありました(今も国によっては存在します)。シーツについた血は結婚と、花嫁が処女であったこと=貞節さの証明となったそうです。
しかし処女であっても必ず出血するわけではなく、花嫁は処女とは限りません。新郎新婦がすでにウフフな間柄だったりもします。
そのため、楽しみに待っている友人や親戚一同をがっかりさせないよう、ちょっとした細工が行われることがあったそうです。
ナンナは結婚するまで入っていた修道院での奔放な生活により、すでに処女ではなくなっていました。そこで母親の提案により、鶏の血で初夜を乗り切ろうとします。
散りばめられたメタファーが何を意味するかはご想像にお任せしますね。
――母はほんとに賢いのよ。あたしがもう処女じゃないのを知っていたので披露宴のディナーに出される去勢雄鶏の首を切り、血を玉子の殻にとって、どう振る舞うべきかをあたしに教えながら、ピッパが出てきた口にその血を塗ったの。[註:ピッパはナンナの娘。]
しばらくすると彼が入ってきてベッドに横たわり、体を硬くしているあたしを抱き寄せ、
夫は彼女の足を開こうとし、ナンナは涙を浮かべて抵抗する。「私、邪悪なことはしたくないの。どうか放っておいて下さいな」と言いながら。
――あたしがさも懇願に負けたように、さんざん泣きながらついに
あたしは浸したパンを味わいながら、体を掻いてもらってる雌豚みたいに歓びの声をあげそうになったんだけど、終わるまでは我慢した。
で、ついに上がった叫び声を聞いてみんなが窓の下に集まり、母がまた部屋に入ってきたの。シーツや自分のシャツを染めた鶏の血を見せられた夫は、妻の初めての男になったと思ってご満悦よ。朝になると、人々はあたしの貞節を褒め讃えたわ。近所じゅうの評判になったんだから。
『ラジョナメンティ』はポルノですが、興奮を煽るよりは風刺と隠喩で楽しませることを目的に書かれています。鶏の血で近所の人ばかりか夫も騙されるのが痛快で、この慣習を
血のついたシーツを結婚の証明とする習わしは世界各地にあり、イタリアの南部の農村では20世紀まで残っていたそうです。
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