白で消える前に

春風月葉

白で消える前に

 だんだんと雪が世界を白く染める様子は言い表わしようがないほどに綺麗だが、どこか寂しさを感じることがあった。‬

 見知った景色が消しゴムで消されるみたいな感覚がして、だから私は目の前の雪から目を背ける。

 辺りで雪かきをする人々もきっと無くしたものを探しているのだろう。

 白は世界を埋めていく…、日の光はまだ雪を溶かしてくれないのだろうか?

 お願いだ、早くしてくれ。

 私の中にあるこの景色が消えてしまう前に。

 どかしても、どかしても、雪は積もり続けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

白で消える前に 春風月葉 @HarukazeTsukiha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る