ラピスラズリの青

春風月葉

ラピスラズリの青

 青というのは昔から高価で希少なものだったらしい。

 堤防と川の間にある青い芝生の上に寝転がり、空を見上げながら私は左手を雲の向こうに向けて伸ばした。

 昔から空を飛ぶことが夢だったが、何年経っても叶いそうにない。

 だからこうして、未練がましく空に手を伸ばすのだ。

 神様は空にいるのだろうか?

 だとしたら空が青いのも頷ける。

 幼い頃に憧れた空も今と変わらぬ深い青だった。

 私は届くはずのない空へと手を伸ばし続けた。

 あの青が欲しい。

 私はスケッチブックを取り出して、未完成な風景画を何枚ものめくった。

 どの絵も決まって青だけが足りない。

 人間は昔、ラピスラズリを砕いて青を手に入れていたらしい。

 あの空を手に入れることができれば、私の絵も完成するのだろうか?

 いつまで私は、届かぬ青に手を伸ばすのだろう…。

 飽きもせず私はその手をもう一度空へ伸ばした。

 あぁ…また、ダメだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ラピスラズリの青 春風月葉 @HarukazeTsukiha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る