02
そうと決まれば、早速行動開始といきたいところなのだが…
今は何時だ?
病室に備え付けられていた時計を見ると、もうすでに学校は放課後になっている時間だった。
「と言うことはもうそろそろ来るな…」
俺は勝手に緊張する。
そりゃ好きなゲームのキャラクターが現実、俺の目の前にいるんだぜ。
鬱ゲーであろうが関係は無い、心が躍る。
俺はゲームで最初に攻略したのが霧ヶ峰アオイ…部長だ。
一目惚れだったと思う。
基本クールな彼女なのだがストーリーを進めて行くほどに、デレていき可愛さが溢れ出る。
結局、ゲームでは会えなくなってしまったが。
まあそれはさておき、完全攻略への手順を考える。
まずはセーブ&ロード、おそらくこの世界には無いが主人公は家に帰り日記をつけることで、セーブをしていた。
帰ったら試してみよう。
その後はイベントの全回収。
これは果てしなく時間がかかる作業ではある。
セーブ&ロードを繰り返し、選択肢を間違えず、みんなが幸せになれるように振る舞う。
この世界にはロードなんて概念はなさそうだから一発でも間違えたらアウトだ。
だって現実だしね。
しかしそれだけで完全攻略できるとは言い難い。
イベント全回収をしてもハッピーエンドにはならなかったと、ネットの記事で見た。
…噂は本当なのだろうか。
一抹の不安が頭をよぎる。
しかしまあ良い。
最終的にゲームと同じエンディングを迎えたとしても、俺一人が犠牲になれば良いだけの話だ。絶対に嫌だけど。
しかも、また彼女達が自殺する光景なんて見たくは無い。
俺は心に固く誓う。
絶対に全員幸せにする。
「おーい!大丈夫ー?」
病室のドアがガラッと開く、そこにはカヨコと空手部の部員達が集まっていた。
「ああ、なんとか大丈夫だ」
「もー本当に心配したんだからね!」
ふむ、全くゲームの中のセリフと一緒、一言一句間違えていない。
この時、ゲームが始まったと重い実感が持てた。
「本当に大丈夫かしら?」
「カケルさんに、何かあったら私は悲しみます…」
「へーき、へーき、こいつなんか死んでも死なないんだから」
「そう言って、一番心配してたのキリカちゃんだよねー♪」
「ばっ!バカ言わないでよ!誰がこんなやつ!」
「ありがとな親友」
「もー!知らない!」
部長のアオイから順に、帰国子女のエリ、親友のキリカ、幼馴染のカヨコ、そして俺の順に話す。
アオイはおっとりとしたお姉さん系で深い青色の髪が綺麗な女の子だ。
あとおっぱいがでかい。
エリは常に丁寧語で話す金髪美女、胸は控えめにだがそれでも抜群のプロポーションを持つ。
キリカはポニーテールで茶髪の女の子、彼女は高校に入った時主人公と意気投合し、親友になるも、ここ最近避けられているような気がする。
ゲームの中の会話を無意識にしてしまった俺は少し笑う。
こんなファンにとって嬉しいことはない。
素晴らしい、死んで良かった…いやダメだけどね!?
「何、ニヤニヤしてんのよ」
キリカが悪態をつくように、ツリ目でこっちを睨んで来る。
おー怖い怖い可愛い可愛い。
「でも良かったです、カケルさんに大事がなくて」
「いや、ごめんごめん」
「ほんとそうね、カケルくんがいなくなったら、誰が部室を掃除するのかしら」
「…勘弁してくださいよ」
まあなかなか厳しい部長な事で、いつも掃除してるのは僕ですよー。
しかし部長も可愛いのでどうしようもない。
ほんと女の子に弱いなぁ男ってのは。
「そういえば、今日新入部員が入ったんだよ!」
カヨコが突然俺の寝ているベットに腰をかけてきて、いきなりそんなことを言う。
は?新入部員?
は?そんなことを知らないんだが?
ゲームでも新入部員なんていうキャラは居なかった。
100%居ない。
え?
すると、ドアの向こうからノックの音と高い綺麗な声が聞こえた。
「失礼します、お菓子買ってきました」
「ごめんなさいね、パシリみたいなことしちゃって。はいこれお金」
「いえいえ、気にしないでください。私が言ったことですから」
……誰だこいつ?
俺は公式ページを何十回と見た居たが、キャラクター紹介欄にこの子は絶対にいなかった。
おかしい…もしや、ゲームとこの世界では少しストーリーが違うのだろうか…
俺は目の前に突如現れたイレギュラーに困惑する。
目の前にいる、銀髪の少女がこっちを向く。
「初めまして先輩、私は永遠楓です」
「……ああよろしく」
差し出された右手を握る。
ーーーこれは一波乱ありそうだ。
好きな美少女ゲームに転生したことは嬉しいんだけど、このゲームは勘弁してくれ。 へんなひと @kuuhakuumi1210
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