第6夏 扉初夏
扉を開ければ夏がくる
夏の扉はもう開いた
扉の向こうは夏でした
開け放しのドアには夏が来ていた
コンコン、初めまして夏です
ドンドン、夏ですよ!夏来ますよ!
懐きますよ!ショカーって鳴きますよ!
初夏の風で扉が開く
初めてじゃないでしょ?夏
夏だから、夏だもの、夏だらけ
夏の空は青じゃない、はじめてのあお
扉が開く音がする、夏の音がする
ちりりーん
からんころん
シャワシャワシャワ
ショカショカ
ジジジジジジ
ワレワレワウチシュウジンダ
ミーンミンミンミーン
ずいぶんと遠いところまで来たもんだ
はじめてきく声ばっかり
こんな人いたら怖いな
本当に宇宙人だな
なんだっけ俺は何をしていたんだっけ
俺はいつどこで何をどのようにしていたんだ
俺は誰だ
あついなあ
あつつい
ああつい
いっつ!
いったあい!!
「起きてよ!もう!」
「何すんだよ」
「こないだ借りた本返しに行こうよ、お父さん!」
「本?んなもん借りたか?」
「お父さんがよくわかんない本読んでる間に僕が借りたの!夏休みの読書感想文のために」
「そーか、えらいえらい。どんなだった?」
「なんかね、うーん、えっとね、いい話で感動した」
「うん、俺の息子だな」
「お父さんはどんな本読んでたの?」
「ああ?たしか、空き缶の狭い入り口になんとか入り込んで、外を透かして見るんだけど朝っぱらのビル群でなんも面白いもんなくて、雑誌と一緒にゴミに捨てられそうになって俺死ぬなーと思ったらなんか呼びかけられてさ、目が覚めたら夏だった」
「夢の話じゃなくてさ。まあいいや、図書館に行こう」
遠所館(としょかん) 新吉 @bottiti
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