第5甘 同時呼甘

 どうじよかん




「「あの」」


「「どう」」「ぞ」「じょ」


「ふふ、今噛みましたね」




 そう言って笑うと彼は苦笑いする

 多分、やっちまったなあって思ってる

 




「「ねえ」」


「ふふ、またかぶった」


「そっちからどうじょ」



 あ、また噛んだ。



「噛みすぎじゃない?」



 ごめん、と彼はすぐ謝る。でも心のなかでは悪かったな、滑舌悪くて。これでも練習してるんだぞ、と思ってる。多分だけど。それと呂律の回らない彼の舌はだいぶ甘いものに偏っている。あの糖分が彼を甘やかしているんだと思う。





「「何?」」


「言って」


「うん?何か用があったんだろ?」


「ないよ、そっちこそ」


「にゃい、あ」


「また噛んだ」


「ごめん」


「怒ってないよ?謝らないで?」


「ありがと」




 謝りすぎ、と私が怒るから

 謝ればいいと思ってるでしょって

 勝手に想像しては怒ってしまう

 こう思ってるでしょ?思い込んで

 透けて見ている錯覚


 甘やればいいんだろうけど

 彼に男らしくなってほしい

 それと甘りにもあまいから

 時々辛からくなりたくて

 それでもやっぱり幸せになりたくて

 味覚まで変になりそう




「会いたい」




 そんな声で言われてしまったら

 耳を通り越して頭が痛くなってくる

 外では今にも雨が降りそうで

 夕方には甘いアメが降るでしょう

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