ごめんね
花海
ごめんね
塾帰りの暗い夜道、ライトの照らされていない細い車道に子猫がぐったりと倒れていた。急いで立ち寄ると、息をしていない。けれど脈はあった。とりあえずパニック。動物だから人間と同じだろうと思って、なるべく負担をかけないような体制で持ち上げた。すると、げっぷをその子猫が漏らした。よかった。まだ息はある。少しだけ希望を持つことができた。それでもってはみたもののこの後どうしていいのかが分からなかった。首輪はついていない。おそらく最近ここらで生まれた野良だということは明白だった。病院に連れていくか?いや、そんな場所は知らない。やみくもに走り回っても夜中だし、何よりスマホや携帯機器を持っていないので連絡手段を自分は持っていなかった。もしかしたらいつもの場所にいったら、親猫がいるかもしれない。いつも猫がたむろっている階段広場に足を進めたが、夜だということもあってそこには何もいなかった。家に持ち帰るか?それも一つの手段だとは思った。だがきっと家族がそれを許さないだろう。…自分にはどうしてやることもできなかった。だから、自分は絶対に車にひかれることがないような場所に子猫を寝かした。げっぷではあったがまだ息をしていた。だが、その目に光はよどっていなかった。何とかならないかと思い、背中を撫でた時、はっとして自分はその子から手を放してしまった。背中からお腹にかけて、普通の人間や動物にならあるはずのもの…骨がそこになかった。もう一度なでて骨の場所を確認するとお尻の方に何かの塊ができていた。直感的に脳によぎった。この子は絶対に助からない。それだというのに、自分には何もしてやることができなかった。あまりにも無力だった。
「ごめんね、チビ猫……」
そんな言葉しか出てこなかった。かなり時間も食ってしまっていたため自分はその子がどうか誰かに救われることを願ってその場から立ち去った。家に帰って手を見ると、猫の首を支えていた手の辺りが血でぬれているのに気付いた。
次の日、母からその子猫が少し離れた場所で死んでいたという報告を受けた。何とも言えない感情が胸に突き刺さった。
失ってしまった子猫の命は今からでは何をしても取り戻すことはできない。昨日の自分の行動に対する罪悪感は今でも消えない。ただ、今はあの子が自分の行動で少しだけでも救われたことを願うばかりだった。
なぁチビ猫、今度もし生まれ変わったのなら今度は俺の場所においで。必ずお前を幸せにしてやんよ。だからそれまでは……またな。
ごめんね 花海 @ginmokusei6800
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