迷宮主さん、おやつ食べましょう!(仮)

 走るペースが落ちており恐縮ですが、丁寧にマイペースにやらせて頂いております。八月には完走する腹積もりですが、何卒ご容赦。

 で、五十二冊目。冬野ゆなさま著「迷宮主さん、おやつ食べましょう!(仮)」です。

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885162200


【あらすじ】

 瑠璃の部屋には不思議の世界への入り口がある。理屈なんて知らない。ただ、自室のミラーを潜り抜けるとどうやら異世界に繋がっているらしい。鏡の向こうにあるのは、薄暗いとある牢屋。そこにいるなんだかとても物々しい存在、ブラッドガルドに瑠璃は「おやつ」をお届けにいく。


【魅力】

 めちゃくちゃ怖そうな人(?)と年若い婦女子がおいしくおやつを食べる話。平和、びっくりするほど平和です。時折挟まれる閑話からブラッドガルドの一端を垣間見ることができますが、とにかく畏怖の象徴であるブラッドガルドがカルチャーショックを受ける姿が面白い。ネットの知識を頼りにしながらも、ブラッドガルドの好奇心に答えようとする瑠璃も好感が持てます。「異文化交流」に特化させた話だと思います。


【改善点】

 読み進めるほどに二人のやりとりがクセになる話です。異文化交流の基本スタンスがわかればどこを楽しめばいいのかが見えてきます。そういった意味で、導入部分というのはやや敷居が高くなっているかもしれません。

 開幕でいきなり自宅の鏡から異世界の牢屋に飛んでいって「おやつ食べよう!」という言うのは、何度も経験している瑠璃だからこそ違和感がない「日常」です。けれど読者からすれば「何故家の鏡から?」「どうしておやつ?」「怖くないの?」「何故通うのをやめないの?」などといった疑問を払拭できないのは事実でしょう。

 瑠璃にとって日常であるブラッドガルドの世界への転移。すべての疑問を解消してほしいのではなく、彼女にとっての日常を読者にも当たり前にしてもらうため、最初の移動はより丁寧に描いた方がいいかもしれません。


【その他】

 ユーハイムのバウムクーヘンが好きです。バウムクーヘンはしっとりとしたものがいいですよね。ぱさぱさしたお菓子は牛乳を隣におかないと楽しめないのが残念です。この小説を読んでいると、上等なお店のお菓子を買って帰りたくなります。上等な、がポイントですね。ブラッドガルドが食べているのも、なんとなーく、高級菓子が似合いそうです。

 最後になりましたが、このたびは書評させて頂きまして、ありがとうございました。

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