仮想箱の説明書
四十冊!四十冊ですってよ奥様!
ということでなんとかここまでこぎつけました。完走も現実味を帯びてきましたね。今回ご紹介するのはkinomiさま著「仮想箱の説明書」です。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883574481
【あらすじ】
仮想箱を知っているだろうか。知らなければ説明しよう。仮想箱とは今からずっと未来に完成している代物で、装着することであらゆる時代を再現することが出来る。タイムマシンではなく、当時の映像の「再演」と言うべきだろうか。では説明を終えたところで、仮想箱を実際に用いたサンプルを見てみよう。欠けた少年とそれを補おうとするアンドロイド、そして再演される時代を。
【魅力】
過去の映像をリアルに体験することにより、未来に生きる人間が失った何かを再度与えようとする。少年が何を失い、アンドロイドが何を与えようとしているのか、徐々に見えてくるのですが、この「何か」が非常に興味深い。少年とアンドロイドという関係性も皮肉がきいているなと感じました。この二人(?)の関係がキモであり、魅力であり、メッセージのように思われます。余談ですが、アンドロイドを「彼」「彼女」と表現している辺り、明確な性別の判断はないとしても、人間味ある存在であるように感じました。
【改善点】
今作は本編が別に存在し、それに出てくる「仮想箱」とは何なのかを説明するためのサンプルケースのようです。しかしあくまでも書評の対象はこの小説のみになりますので、本編の知識や補完ということは一切無視して書評をさせて頂きます。ご容赦。
コンパクトにまとめられた小説です。最初と最後が誰かによる「説明文」というのが、また現実に引き戻される感覚に陥るのですが。気になったのは言葉の使い方でしょうか。アンドロイドとロボットが本文で混在していることには何か意味があるのかな?と邪推してしまいました。アンドロイドが何か説明はあっても、ロボットとの違いは書かれていなかったので。あとはアンドロイドに「彼」「彼女」という代名詞を当てていること。センセイについては女性的なパーツが描写されているので理解できますが、焼却炉のアンドロイドは特に説明がないまま「彼」だったり。そういった細かい言葉遣いの違和感が、短い話であるぶん気になりました。少年とセンセイにフォーカスするぶん、他の部分は妨げにならぬよう言葉を探してあげるといいのかなと思います。
【その他】
機械人形に「彼」という人間に使う代名詞を使う。動物も、ペットは家族だからと「彼」などと使うことがありますね。本来人にはなれないものに人のような言葉を使うのは、語り手の愛着ゆえでしょう。一人称小説ではそういった言葉の使い方でも、心情や思い入れを汲み取れそうです。
最後になりましたが、このたびは企画に参加頂きましてありがとうございました。
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