リベンジ・コロシアム

 三十九冊目は牧屋さま著「リベンジ・コロシアム」を書評させて頂きます。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054885832287


【あらすじ】

 帝国の襲撃によりファリア王国は陥落し、王女エリンデールは王家の血を引くものとして帝国の手に落ちた。エリンデールの窮地に駆けつけた騎士ウィルガンドは、奴隷騎士となり帝国の見世物であるコロシアムへの参加を余儀なくされる。仇敵である皇帝の遊興のため、エリンデールの命を救うため、そして何よりも、己の復讐を遂げるためにウィルガンドは出来レースじみた舞台に身を投じる。


【魅力】

 濃厚であり、白熱する戦闘シーンがいいです。厳密には黒い思いが白熱するというか、文字にするとなんだこれという感じですが。ウィルガンドの動力が復讐なので、戦い方も騎士といえどもお綺麗じゃない残酷さ、生臭さが人間らしいなと。基本的にウィルガンドは満身創痍で、相手との戦力差に推されつつも乗り越えようとしていくのが、泥臭い彼の人生を体現しているかのようです。どんな残虐な振る舞いをしてでも勝つという意志を感じます。


【改善点】

 導入からコロシアムに入るまでの流れが、言わば負け犬のようなところからのスタートなのがいいなと思っております。一筋縄ではいかない展開を感じさせて。そのぶん、コロシアムエキシビションからの緩急が見えにくいかもしれません。

 地の文のボリュームが凄いのです。戦闘描写も、心理描写も、コロシアムや世界の説明も、厚みのある文章で述べられている。どの分野にも手抜きせずぎっちりと文字で綴られているので、どこで息つくべきかわかりにくい部分があります。この小説の見せ場はコロシアムでのアツい戦いだと思っているのですが、コロシアムに参加していない期間はいい意味で力を抜いたほうがいいかもしれないです。情報屋との出会いも、もう少し文章量を減らしてもシナリオは十分伝わると思うので。読みやすさとは何も語彙に限ったことではありません。シナリオを見やすくするための緩急、シーンの凹凸、ウェイトのバランスなど、配慮する方法はいくつか挙げられるかと思います。


【その他】

 最近こちらが本編と関係なくなって恐縮ですが。コロシアムというとソーシャルゲームとかのランクシステムを彷彿とさせます。対人式で、各ランクには定員があって、相手を蹴落とし蹴落とされ上のランクを目指す。今作では最高ランクに到達することで願いを叶えられるというご褒美がありますが、ソーシャルゲームのコロシアムは何を求めて挑んでいくものでしょうか。名誉? 限定のカード?私はあまり張り付けなくなってしまったので、そういったリアルタイムバトル系はもう底辺で満足するようになりました。

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