バカもとい八英雄の日常〜その1

~人物紹介~


・カミノギ・ユウ。人族。英雄に拾われた子供。

・カーファ・ドーレ。人族。「龍殺し」の二つ名を持つ。

・ノア・マクレーン。エルフ。「絶対殲滅」の二つ名を持つ。

・タチバナ・ミズハ。人族。「水蓮氷花」の二つ名を持つ。

・ダガル・ライガ。人族。「豪神」の二つ名を持つ。

・ミルネ・ティルファ。天人族。「殺麗美魔」の二つ名を持つ。

・トア・クライス。人族。「億戦錬磨」の二つ名を持つ。

・ミーニャ・ネコット。猫人族。「幻廻天」の二つ名を持つ。

・ヤミナ・クアラ。魔族。「超絶無敵」の二つ名を持つ。














俺の朝は早い。お天道様が顔を覗かせる時間には既に起床してる。

理由はと言うと今も俺のベットで爆睡しているレギムンドの王国戦士長「億戦錬磨」トア・クライスに「幻廻天」ミーニャ・ネコットを起こすため。

こいつらは王城で仕事あるってのにまだグースカピーと寝てる。


「ほら起きろや!ってか何で俺のベットにいやがる!!」


バシべシと2人の頬を叩き、起こそうとする。

この2人は事あるごとに俺の部屋のベットに潜り込んで寝ている。ムサイ男と猫耳がピクピクと俺の頬に当たるから寝づらくてウザイ。


時間的にもそろそろ起きないとマズいのに。まぁいざこういう時の場合にはとっておきがある。


「早く起きないと飯食わせないかんなー」


途端


「おはようユウ!!いい朝だな!!」

「おはようにゃ!ユウ、今日のご飯は何かにゃ!?」


反射なのか起きてたのか分からないくらい瞬間的に体が起き上がってくる。そしてにこやかな笑顔で俺の肩に手を置いてから部屋を出ていく。


ため息混じりにシーツを整えて俺も下に降りる。後の奴らは朝早いものでも無いし起こさなくてもいい。


下に降りて台所に向かう。アホみたいに広い家にも慣れた。キッチンとされる場所には色々な物が揃っていて多種多様な料理が可能となっているが、全部作るのは俺である。


料理は俺とドーレ以外出来ないからほとんど使われないんだよ。


「今日は肉飯だな。お弁当も作んないと」


いつも通りテキパキと朝飯を作り終え弁当作りに取り掛かる。クライスは人の3倍食べるから飯もそれくらい作らなきゃならない。


詰め終われば朝飯をテーブルに持っていく。


「おっ、今日は握り飯か!中身は何だ!!」

「秘密だよ!あとコップ出して」

「了解にゃ!」


着替えを終え仕事服に身を包んだ2人は結構キマッていた。いつもそのくらいにしてくれればいいものを…


俺は2人の部屋を覗くと脱ぎっぱなしの服を見つける。

やっぱり。どうしていつも脱ぎ捨てたまんまにするのだろうか。シワが出来るしカゴに入れてもらわないと持ってくの面倒なんだよ。


俺はリビングに戻って早く早くと急かす2人の頭をチョップする。


「次脱ぎ捨てたまんまの服見つけたら朝飯を抜きな」


その時の顔と来たら。この世の終わりみたいな顔して高速で頭を縦に振ってたよ。凄い笑えた。


俺はコップに水を汲み、席に着く。


「「「いただきます!」」にゃ!」


2人は取り合うように大皿に乗った握り飯を掴み両手食いする。口周りにはご飯粒が付いてるけどそんなのお構い無しだ。


俺は一つだけ取るとゆっくりと食べる。朝起きるのは辛いけどやっぱりこういう風に美味しく食べてくれるのは嬉しいし作った甲斐があるってものだ。


「もっとゆっくり食べろよ…」


段々とペースが上がってご飯粒がこっちまで飛んでくる。意味がわからない。故意に粒でも口から飛ばしてるのか、それくらい凄い勢いで飛んでくる。


俺は食べ終えると皿とコップを持ってキッチンに向かう。テーブルは最後に食べ終わった人が片付けるようにするのがこの家のルール。


今も顔を綻ばせ美味しそうに食べる2人をみて苦笑する。


それから先に食べ終えたミーニャが自分の皿とコップとクライスの皿とコップを持ってキッチンにくる。クライスはテーブルを片付けるとキッチンに来て自分とミーニャの分を洗う。


こういう所はちゃんとしてくれるようになった。1年間こまめに教えた甲斐があったよほんと。


出会った当初は水の出し方すら知らなかったのに今では皿洗いもキチンとこなすクライスを見て涙が零れそうだよ。成長したなぁ


「なんか今失礼な事考えてないかユウ」

「いやいや、全くそんな事ないよ」


そうか、と頷き皿を蛇口を閉め食器を洗い終える。俺は事前に持ってきた仕事用のカバンをクライスに渡し玄関に向かう。


ミーニャは既に靴を履き終えクライスを待っている感じだ。


「っよし!完璧だ!後は…」


靴を履きシャキッと俺の方をむくクライスは笑って俺の背中に手を伸ばし抱きついてくる。


「ユウのエネルギー注入だ!」

「きめぇ!!!」


俺は無理やり引き剥がそうとするけどまぁ無理だ。「億戦錬磨」の英雄に力で勝てるわけないよね。


仕方なくされるがママになっていると今度はミーニャが抱き着いてくる。毛がふさふさして整えてきたのが分かる。


「うん!じゃあ行ってくるにゃユウ!」

「行ってくるぞユウ!」


「ほーい、いってらっしゃーい」


こうして二人は仕事に向かって家を出ていく。

それからは掃除と洗濯を済ませる。この時間は基本自由だからいつも家事はこの時に終わらせて後から時間を作る。


この家バカ広いから廊下だけはミズハさんにやってもらう。あと、使わない部屋とかは真空魔法で常時ホコリが出ないようになってる。


全ての掃除が終わって後は洗濯。洗濯は何回かに分けないと全部は洗えない。これだけ人数もいれば当たり前だけど。


「ユウ〜おはよぉ〜」

「あ、おはよミルネ。朝飯は?」

「いるぅ〜」


目を擦りながらパジャマ姿で降りてくる天人族の女性「殺麗美魔」ミルネティルファ。400才のくせに顔は完璧に20代前半。

天人族は天界に住んでいた天使がで下界に興味を持ち降り立ち、子を産み、そして生まれたのが天人族らしい。要するに天使と人のハーフだ。


寿命は勿論長いし最高で2000才がいるとか。次元が違うね。


俺はミルネに顔を洗ってくるように促しそれに頷いてトボトボと俺についてくる。


「いや、洗面台あっちな」

「キッチンでも顔は洗える〜」


そう言って俺が朝飯を作っている横で普通に顔を洗うミルネ。おっとりした性格でマイペース。感情はあんまり外には出ないからよく間違われたりすることが多い。


俺は予備のタオルを出してミルネのそばにおいて置く。顔を拭くタオルは一応台所下の箱の中に常備してる。


「ありがと〜」


ミルネは俺に薄く笑いかけてから顔を拭く。雫が鎖骨を伝い妙に色気のある首筋に自然と目がいきそうになる。いってないからな。


俺はそのまま朝飯を作り終えミルネは料理をテーブルに持っていく。流石に自分の分は持っていくくらいの礼儀は最初から身に付いていたからよかった。


「ユウはもう食べたの〜?」

「ミーニャとクライスと一緒に食べたよ」


ミルネは俺の言葉を聞くと頬を膨らませテーブルをドンドンと叩く。


「なんだよ」

「何で私も呼んでくれなかったんですか〜」


怒ってますとアピールしているミルネは足をバタバタとさせ子供のように駄々をこねる。

こういう時は凄い感情を表に出す。ミルネは冒険者、クエストでお金を稼いでる。けど、1回のクエストで大体2週間分の食事代は稼げるから普段は家でグータラ生活。


でもそれはもう一人いる。


「ふぁ〜おはよーユウ君、ご飯をくれないかしら?」


伝説級冒険者達を蹂躙した魔族「超絶無敵」ヤミナ・クアラ。

一応貴族の子供に魔法を教える家庭教師をやっているが全て才能ない、あるで決め、例えあっとしてもヤミナのお眼鏡に叶う者じゃないと教えないと豪語した。そしてそんな子供は未だかつてたった一人、俺だけ。


その為教える相手は俺だけということになる。結果グータラ生活。

実際俺も魔法の才能はあるらしく鍛えればバカ英雄クラスにはなるとか。


ぶっちゃけ人並み程度に覚えるくらいでいいと思ってる。バカ英雄の域までいくと色々制限されそうだから嫌だ。


「食べるなら早く席つけよな」

「はーい」


作っておいたヤミナの料理を持っていきテーブルに置く。この2人は大食いでもないし少食でも無いから作るの楽なんだよな。好き嫌いもないし。


ヤミナはミルネの向かい側に座り「「いただきます」」

二人揃って食べ始める。

俺は時間が空いたから魔法の本でも読もうかな。


リビングの本棚に置いてある魔法教本を手に取り椅子に座る。

食べるための空間とくつろぐ用の空間がリビングにいっしょくたんになってるから食べた後は大体くつろぐ方の椅子に座ってゆっくりする。


「ねぇミルネ、今度下着買いに行きたいのだけど一緒に行ってくれないかしら?」

「いいよ〜。私も少し大きくなってたから、買いたかった〜」


俺は椅子に寄りかかりながら本を読んでると女性特有の話が聞こえてくる。

俺がいるんだから別にここで話さなくてもいいのに。


「やっぱりあれね、勝負下着とか買った方がいいわよね」


勝負下着?何だそれ。


俺はキッチンから飲み物を取り出して持っていく。


「私はもう、持ってるよ〜」

「え?そうなの!?見せて!」


「後でね〜」とミルネの軽い返事が聞こえ食に色が増す。

勝負下着ってほんとなんなんだろう。勝負って言うんだからやっぱり強い魔物とかと戦う時用の戦闘パンツなのか?…ちょっと見てみたいな

いやでもこのバカ英雄、もとい八英雄が苦戦する魔物とかいんのか?それこそ見てみたいな


そんな二人の会話に頭を悩ませているのをミルネとヤミナはニヤニヤとしながら見ていたのを俺は知らない。




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常識を知らない英雄達に育てられた俺がその英雄達のお世話をすることになりました @Rlqsia

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